和義

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和義

その山には、真っ赤な鳥居があると言う。 なぜ、疑問形なのか? それはそう言われてるだけで、行こうとしても辿り着けないのだ。 そして、鳥居と言うがその向こうに神社は無い。 ただ山の中に、ポツンと鳥居いがあるだけだ。 嘘くさい話、なのだがーー 今、その鳥居が和義の前にあった。 「何だこりゃ?」 和義はそう呟き、鳥居を仰ぎ見る。 和義は鳥居の伝説など知らなかった。 ただ、山中に突然現れた鮮やかな赤い鳥居に驚いただけだったが 「山岳信仰の何かか」 和義は、すぐに自分で納得する答えを出した。 山の中には、意外に多くの小さな神社のような物はある。 昔は各山には神が居て、山越えの安全や山からの幸を願い、それらを祀っていたのだ。それらは今でも、麓の人間には文化として受け継がれている。 和義は深い考えもなく、何となく鳥居を潜る。 鳥居が在るから潜るのは、日本人だけでなく、人間の心理的にありふれた行為だった。その形は門なのだ。門を潜るという行為は万人の常識で在る。 ーー和義は先へ進む。 ただ、門の先には何かがある筈なのだが、 ーー普通は建物が在る。 此処には無いも無い。 ただ道が続くのみだ。
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