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北の大地で 18
「宗吾さん、おはようございます! 」
「あぁ瑞樹、どうだった? 今日からペンションの手伝いを始めたんだろう? 指の負担になってないか」
「あ……重たいものはちょっとまだ無理でしたが、何とか」
「そうか、無理するなよ。にしても声が明るいな」
「わかりますか。 実は今日はまた他の小学校の時代の同級生と再会しました。何だか心も体も丸くなって、幸せそうでしたよ」
なぬぅ……同級生だと? それ大丈夫なのか。
ニューヨーク出張中の瑞樹との国際電話は、朝と夜の二回、定期便だ。
離れていても心はしっかりと重ねていきたいので、俺もせっせと恋人に電話をかけている。本当に自分が可愛く思えるマメさだ。飲みの誘いも断ってホテルに戻ってくるし、朝も早起きできている。
しかし瑞樹は大沼で変化に富んだ日々を過ごしているらしいな。何でも包み隠さず話してくれるのは嬉しいことだが、なかなかいちいち心臓に悪いぞ。
「それじゃ瑞樹の小学生時代がとうとう明かされたってわけか。相当女子にモテていただろう?」
つい心配で鎌をかけるように聞くと、嘘をつけない瑞樹は言葉を詰まらせた。うっ、やっぱり。
「え……なんでそれを」
ついでにもう一つ聞くか。
「ついでに男にも、モテていただろう」
「えっ……それも知って? 」
あーやっぱり。心臓がもたないな。瑞樹の小学生時代か、相当可愛かっただろうな。同じクラスだったら俺も放って置けなかっただろう。
ここがニューヨークなのがもどかしいよ。
今すぐ舞い戻って瑞樹にキスの嵐で、マーキングしたい気持ちでいっぱいだ。
「……そっ宗吾さん? 息遣いが何だか……激しいですよ」
「あぁ悪い。つい想像したら心配になってな。瑞樹の過去に今更、焼きもちだ」
「そんな……心配なんて……必要ないですよ。僕は宗吾さんのことばかり、いつも考えていますから」
「瑞樹……その言葉は嬉しいよ。あれ、してくれるよな」
「あっ……はい」
目を閉じて、瑞樹からのあたたかな口づけの温もりを感じる。
電話越しだって、気持ちはしっかり届くよ。
君が心を込めてしてくれるものだから。
瑞樹の言葉や仕草は、いつもとても優しい。
まるで人を安心させる魔法を含んでいるようだ。
遠く離れていて正直不安になることも多いが、彼の思いやりが俺を支えてくれる。
だから俺は明日も明後日も、瑞樹にコールする。
そして瑞樹から電話越しのキスをもらう。
この俺がこんなロマンチックなことに至福な喜びを感じるとはな……
本当に瑞樹との恋は、いつも新しい。
あとがき(不要な方はスルー)
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いつもお読みくださってありがとうございます。
今日は3000文字を超えてしまい、長くなったので2話に分けました。
大沼で瑞樹は過去と触れあう大事な時を過ごしていますが、宗吾さんと離れ離れなので、ジレジレ感で私もそろそろ限界です(;'∀') 読者さまもきっと同じ気持ちでは?
というわけで、明日は話をぐっと大きく動かそうと思っていますので、よろしくお願いします。
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