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幸せを呼ぶ 14-2
「おやすみーパパ」
「おやすみなさい。瑞樹くん、宗吾」
「おやすみ!」
「おやすみなさい。本当にありがとうございます」
芽生は祖母と一緒に別の部屋で眠ることになった。
なので俺は今からゆっくりと時間をかけて、瑞樹を寝かしつけてやるつもりだ。
彼が寝付くまで、すぐ傍にいてやりたい。
敷布団の上に座って申し訳なさそうに、瑞樹が俺を見つめる。
またそんな目をして……困った奴だ。
「何だかすみません……宗吾さん……何から何まで」
俺のぶかぶかなパジャマを着て、目元を赤く染め、きまり悪そうにする瑞樹が、可愛くて目を細めてしまう。
「気にするな。それより瑞樹よかったな」
「え……何がですか」
「君はちゃんと熱を出せるようになったんだよ。やっぱり熱はな……その都度ちゃんと外に出した方がいい。今まで君はあれこれ溜め込み過ぎだったから」
「……そうでしょうか」
「そうだよ」
思い当たることがあるのか、瑞樹はきまり悪そうな表情を浮かべた。
「もしかして、今日何か変わったことがあったのか。会社はどうだった?」
「あの……宗吾さん、僕、四月から元の職場に元の状態で戻ることが出来ます。今日はそれが嬉しくて、本当を言うと……帰り道、少しふわふわした気分だったんです」
「おぉ。よかったな!そうか、じゃあやっぱりこれは知恵熱かもな。久しぶりに職場に行き、花に集中して触れたしな」
「え、何でそれを」
「それは、さっきから……瑞樹の躰から、とてもいい匂いがするからさ」
「なっ」
瑞樹が慌ててもぞもぞと布団に潜ってしまった。
「僕の躰がそんな……その」
俺が近寄ると、ますます顔が赤くなる。なるほど熱だけで元気そうだ。やっぱり知恵熱みたいだな。これはとニヤリと笑ってしまう。
「あの……宗吾さん、近いです。もう……また熱が……あがってしまいます」
困った顔の瑞樹。
どんな瑞樹も好きで好きでたまらないと、実感する瞬間だ。
「ふっ……何もしないよ。添い寝だ。さぁもう休もう」
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