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幸せを呼ぶ 20-2
さっき持たせてもらった菓子箱を開けると、美味しそうな、こんがりパリッとした皮のシュークリームが4つ綺麗に並んでいた。
「わぁ~大きなシュークリーム」
「へぇ旨そうだな。ん? 珍しくチョコクリームか」
「今日アレンジメントをお届けした洋菓子やさんのです。とても美味しそうですよね」
宗吾さんがじーっと僕を見つめるので、不思議に思った。
「どうしました? あっもしかしてチョコは嫌いですか」
「大好きだよ。しかしなぁ……今年は付き合っているのにバレンタインもホワイトデーもなかったな」
「あっ……」
そうだった。大沼のペンションで働いていた時は、毎日重労働過ぎて吹っ飛んでしまって……必然的にホワイトデーも何もなしだった。
「すっすみません」
「ん? いや、俺の方から贈るべきだったなと後悔してるんだよ。何を謝る」
「だって僕の方こそ」
「えぇーおにーちゃんとパパは交換しなかったの?」
すかさず芽生くんが話題に参入だ。
「ん、忘れてしまったんだ」
「ダメだな。メイはちゃんとコータくんと交換したよ」
「なぬっ?」
「パパにも話したよーおばーちゃんと作ったの、忘れちゃったの。もうパパは忘れんぼだな。そうだメイいいこと考えたよ」
芽生くんってやるな。僕見習わないと駄目かも?
「このシュークリームチョコ味だからちょうどいいよ。これをコウカンしたらいいよ」
「そうだな」
「……いただきものですが」
「まぁいいじゃないか。一つ余るから、それは仲良く二人で分けような」
****
「瑞樹、ほらじっとして」
「宗吾さんっ──もう、もう許して下さい」
俺の服を着た瑞樹を洗面所に連れ込みドアを閉めた。
そのまま壁に押し付け、上着をたくし上げて持たせた。
「ここ持ってろ」
ギリギリの所で、淡い色をしたふたつの果実が見え隠れしている。そこにシュークリームのチョコクリームを指にたっぷり取って、塗ってやる。
「えっ!」
瑞樹はびっくりし……固まっている。
その驚いた顔も、最高に可愛いんだよな。
果実の上のクリームを、俺の舌でぺろりと舐め取ってやると中に硬い種を感じた。そこを舌先で突っついてやると、瑞樹の躰がブルっと熱く燃え滾った。
俺の舌先で過敏に反応する躰が愛おしくて、止まらなくなる。
「い……やっ」
「もっと塗ってやろう」
「んっんんっ……」
もっともっと……
「チョコより甘いな、瑞樹のここ」
「やっ……! 」
****
「もっと食べますか、宗吾さん」
「あっ? あぁ」
ハッと妄想の世界から正気に戻れば、瑞樹がシュークリームを差し出してくれていた。
その横で芽生がジドっとした目つきで俺を見ていた。
「おにーちゃん、大変大変っ! パパね、またすっごく変な顔してたよー」
「くすっ、パパはチョコが好きみたいだね」
「違う! チョコじゃなくて瑞樹が好きなんだ」
「そっ宗吾さんっ、芽生くんの前でそんなことばかり言わないでください。もう……恥ずかしいです。さっきから」
さっきの妄想の瑞樹のように、恥ずかしそうに顔を赤くするもんだから、首元まで朱色に染まって、ますますそそられる。
あぁ食べたい──
あとがき(不要な方はスルー)
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志生帆海です。
バレンタインのお話書けなかったので、ちょっと今日はサービス多めの瑞樹でした! (妄想の中ですが)いつも読んでくださり、沢山のスターをありがとうございます。すべて更新の励みになっております!
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