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幸せを呼ぶ 21-2
「葉山先輩、昨日はお疲れ様でしたー」
「おはよう」
「今日もすげぇ可愛いっすね」
「……」
「っと、すみません。調子に乗りました」
そういうことは、宗吾さん以外の人に言われたくない。宗吾さんに言われると、恥ずかしくも嬉しいだけなのにな。というわけで冷たい目で見つめてしまった。
「そうそう、朝一で昨日先輩が届けた店からFaxが来ていましたよ」
「ん? 見せて 」
「これですよ」
見ると、手書きで温かいお礼が書かれていた。温もりを感じる肉筆に思わず頬が緩む。
「ふーん、今時手書きで熱くお礼とか、やっぱちょっと古臭いですねぇ。こういうの俺苦手で。ムズムズします。あわよくばまたっていう下心満載ですよね」
「えっ?」
「だって、こんなことするのは小さな個人商店くらいじゃないですか。うちの会社の規模だったら相手にしないような店だから、本当によっぽど嬉しかったんでしょうね~」
うーん……やっぱり君はなかなか教育しがいのある新人だ。深くため息をついてしまった。
「金森くん……ちょっといい?」
「はいはい、なんでしょう?」
朝から給湯室に連れて行き、モーニングコーヒーを淹れてあげた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。うほぉ~先輩自ら嬉しいです!」
「さっきの話だけど。僕は……人は一人ずつ違う感性を持っているから考え方は自由でいいと思う。でも仕事として受けた人に対して、あぁいう言い方はないと思うよ」
「へ? どういう意味ですか」
「うん……どんな相手でも、それまで生きてきた人生の分だけの想いがあるんだよ。自分と価値観が合わない、相性が合わない、気に入らないからといって、一方的に攻撃したり蔑んだ言葉を発するのはどうかな」
「え……」
「覚えておいて欲しい。目の前にいるのは、自分と同じ血の通った人間だ。違う意見を寛容に受け止め、接する人をもっと大切にしないと。何故なら、そういうトゲトゲした気持ちに、僕たちが扱う花はとても敏感なんだよ。花が人に寄り添ってくれるように、僕たちの心も依頼してくれた人に寄り添いたいよね」
僕も、時に人から憎まれたり蔑まれたりすることがあった。どんなに誠意を尽くしても……素直な気持ちで向いあっても、伝わらないこともあった。
優しい心は弱く見えて、強いものに攻撃されやすいのかな。
でも僕は……以前とは違う。
どんな踏まれても、前を見て、上を見て歩んでいきたい。
そう強く思えるようになったのは、やっぱり宗吾さんのおかげだ。
「そうか。なんか先輩って、見かけによらずカッコいいですね。考えが深くて……俺はいつも目の前に見えていることだけで判断してしまって恥ずかしいです。これって長年染み付いた悪い癖ですね。もっとその人の見えない背景にも目をやらないと……ですね」
「うん、少しでも分かってくれたら嬉しいよ。これからだよ。君の意識を徐々に変えて行けばいい」
「心がけます。だから今日こそ親睦の証に飲みにつれて行ってくださいねっ先輩!」
うわっいきなり懐きモード? でも……どうしたら……僕は男性と二人きりは得意ではない。困ったな。
するとリーダーがやってきて、一枚の紙を僕たちの間に置いた。
「おい、新人にはまだ早い! 我が部署の大切な葉山とサシで飲むのは禁止だぞ!だが、それも可哀想なので、今日はお前の歓迎会を企画したぞ。場所ここな!」
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