幸せを呼ぶ 22-2

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幸せを呼ぶ 22-2

「じゃあ葉山の復帰と、久しぶりに我が部署に配属された新入社員の歓迎を込めて、乾杯」 「乾杯! 」  会社からほど近い料理屋で、部署のメンバー15人程で飲み会を始めた。僕が入社してからほぼ変わらないメンバーなので、気心が知れている。 「葉山と飲むの、久しぶりで嬉しいよ」 「そうだな。でも怪我のせいでずっと飲んでいなくて……だから今日はノンアルコールで頼む」  宗吾さんにも飲み過ぎるな(正確には飲むな)と言われたし、やめておこう。 「そうか。お前、酔うと可愛いのに残念だな。可愛い葉山見たかったなー」 「馬鹿、男に可愛い、可愛い言うな」 「はははっ、だな。俺、何言ってんだ? でもさぁ……なんか久しぶりにあったら、その可愛さに磨きかかったぞ。もしかして休職中にいい人でも出来た? 」 「だからもう可愛いって言うなー」  同期の菅野とはポンポン物を言い合える間柄なので助かる。そして冗談めいた口調だが、きちんと頼んだことは守ってくれる。  さっきから僕に酒を勧めてくる人をやんわりと断り、代わりに飲んでくれていた。 「お前こそ飲み過ぎたら、まずいんじゃ……」 「大丈夫だってぇえ」  何だかすでに声が変だ……大丈夫かな。 「あっ! いーな! 先輩同士で仲良く飲んじゃって。俺もそこに混ぜてくださいよ」  既に結構飲まされベロベロな状態の後輩が、僕と菅野の間に突然ドスンと座ってきた。  わっ! すでにかなり酔っぱらっているようだ。 「お前、酒臭いぞ。大丈夫か」 「うっ……もう、駄目っす」 「わっー待って!」  そのまま僕に向かって倒れてきたので、焦ってしまった。 ****  よしっ、今日の仕事は完璧にこなした。    金曜日なので芽生は母の家に泊まる。だからこそ瑞樹を誘って外に飲みにいこうと思ったが、想定外にフラれてしまった。まぁ、歓迎会ならしょうがないが。  俺はどうするかなと、スマホを眺め苦笑してしまった。  瑞樹が大沼にいた時は我慢できたのに、手が届く場所にいると思うとこんなにも我慢できないなんて、節操ないか。  だがもう十分過ぎるほどに俺は待っただろう。躰の奥から燃え滾る想いに、悶々と苦しめられているよ。あと数週間が我慢できない。 「滝沢さん、お久しぶりです」 「おっ林さんじゃないか。暫く見なかったが、どうしてた?」 「あぁパリロケですよ。いやぁ2週間缶詰状態で参りましたよ」 「そうか。だがスタッフに辰起がいただろう? 」  耳打ちすると、ニヤリと笑った。 「分かります? 」 「若いエキスもらったな。肌がツヤツヤだぞ」 「はは、まあな。そうだ今日は空いてますか。金曜日だし一杯行きませんか」 「行くっ! 」  イカン……つい即答してしまった。 「ははっノリノリですね。でも俺でいいんですか。金曜日なのにデートとかは? 」 「行きたい店があるんだ。付き合え! 」 「どこですか。パリ帰りの身としては……和食がいいんですが」 「喜べっ、和食の割烹料理屋だ! 」 **** 「なるほどね。滝沢さんも案外可愛いことをするんですね」 「五月蠅いな。いいだろ?……どうしたって気になるんだから。ならいっそ! 」 「まぁ俺をダシにつかってもらう分にはいいですが。あーあそこか。例の可愛い彼、心配ですね。幸い今は隣の男の子が代わりに飲んでいるようですが、この後どうなることやら」 「……うーむ」  瑞樹が飲み会をしているという割烹料理屋に、林さんと潜入してみた。  『可愛い子には旅をさせよ』などと悠長なことを言ってられない。  あーもうこの俺がストーカじみたことをと思いつつ、瑞樹が酒を飲まされ過ぎないか、誰かに絡まれないか……心配でつい何度もチラチラと様子を見てしまう。  瑞樹は気付いていないが、俺の方は気になって仕方がない。 「滝沢さん、なんかキャラ変わりましたね」 「しーっ、認めるから、静かにしろ!集中したいんだ」 「やれやれ」  
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