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幸せを呼ぶ 23-2
「へぇ……ここが葉山の家だったのか」
「わぁ、あこがれの先輩の家だ! あのぉ~でも、この人は部外者のような気がするんですが」
金森が宗吾さんを指さして、首を傾げている。
「えっと、どこかで見たような。あっもしかして昨日の朝の人じゃ!」
「……彼は滝沢さんと言って僕の友人で、今日は偶然居合わせて、君たちを運び込むの手伝ってもらったんだよ」
無理があるかなと思いつつも、宗吾さんを巻き込んでしまった。
「そうっすか~まぁどうせ男ばかりなんで、何人いようが構いませんが~あぁそれにしても飲み過ぎてしまって、すみません」
「謝るのは、僕じゃなくてシャワーを浴びている菅野に」
「ですよね。でもおかしいな? 僕は葉山さんの胸に飛び込んだつもりが、なんで菅野さんだったんだー?」
「……深く考えないで、次、風呂入ったら?」
「あっですね、うわっまだ臭いや。参ったな~」
「さてと、洗ってしまおう」
僕は炊事は苦手だが、洗濯や掃除は好きだから、汚れたスーツを丁寧にもみ洗いして部屋干しにしてあげた。これで明日には着て行けるはずだ。
その様子を宗吾さんが壁もたれながら楽しそうに見つめている。
「ふーん、瑞樹は手先が器用だな。なのにどうして料理だけはダメなんだろうな?」
「うっ……それは言わないでください。恥ずかしいので」
「くくっ、まぁ俺がやることなくなると困るからいいが、それよりあいつらどこで寝かすつもりだ。確かここには君の布団以外ないよな」
「あっそうだ。連れて来たのに布団がなかったんだ。前に広樹兄さんが来た時は持参の寝袋に入ったんだっけ」
「くくくっ、あいつ寝袋持参で?」
「えぇ」
「可愛い、にーさんだな」
結局、まだ酔いの冷めない菅野はソファで寝落ち、その隣に金森も寝落ちで静かになった。
「あっけない……幕切れですね」
「いや、これでちょうどいい」
「ですね」
彼らにすっぽりと毛布をかけてやった。
「これで寒くないですかね」
「ふたり寄り添って寝ているから、大丈夫じゃないか」
「くすっ変な言い方しないで下さいよ。明日から変な目で見そうです」
「ははっ、さぁ俺たちも寝よう」
入れ替わりでシャワーを浴びた。
「あの……宗吾さん、パジャマ代わりのものって、これしかなくて」
「ん? 浴衣か」
「すみません。丈が短いかも。でも広樹兄さんのだから、僕のパジャマよりマシかなって」
「いいよ。これで。それより珍道中だったが、俺もここに泊ってもいいんだよな」
「……えぇもちろんです。あの……僕の部屋で寝ますか」
「おぉ」
「ベッドは一つしかないですよ」
「一緒に寝ていいか」
「……狭いですよ」
「俺たちも、くっついていれば大丈夫だろう」
宗吾さんが僕のベッドで眠るのか……なんだか緊張してしまうな。
「そうだ、瑞樹の部屋。鍵ついている?」
「えぇ」
「じゃあ一応閉めて寝るぞ」
「あっ……はい」
隣の部屋で同僚と後輩が眠っているのだ。
鍵を閉めたからといって、何が出来るわけでもないが、二人で一つのベッドを使う。
それだけでも嬉しい……
宗吾さんと一緒に朝まで過ごせることが……とても嬉しい。
「宗吾さん……あの」
「何だ?」
「今日は偶然でしたが……引っ越し前にもう一度遊びに来てもらえて、嬉しいです」
「前は兄さんと雑魚寝だったからな。今日は君をこうやって独り占めできる」
彼の手が僕の腰を掴んだかと思うと、すぐにぐっと抱き寄せられてしまい……思わず声を上げそうになった。
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