幸せを呼ぶ 26-2

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幸せを呼ぶ 26-2

 何だか乾燥のせいか冷たい物を飲みたいし、急に小腹が減ったんだけどな。流石に冷蔵庫やキッチンを勝手に開けるのはまずいだろう……おーい、どこで寝ているんだ?  そういえば、さっき俺が転寝していた居間に続くドアがあったな、あそこか。  そっと部屋を突き抜け、そのドアノブを何の気なしに回した。  ガチャ──ガチャガチャ……  あれ? なんで鍵なんてかけて……  葉山の部屋だとしても男同士なのに鍵をかけて眠るなんて、随分と警戒心が強いんだな。  その次の瞬間、ドスンっとベッドから人が落ちたような物音がした。 「おいっ葉山! 大丈夫か」 「……なっ何……えっ起きたの? いつから」 「おー、ちょっといいか。ここ開けてくれよ」 「わっわかった!」  慌てた足音がバタバタと聞こえ、鍵が解除される音と共に、葉山がスッと現れた。    その顔を見て、ドキっとしてしまった。  コイツ……なんだ? すげー色っぽい。  こんな表情する奴だったか。唇もいつもより赤くて濡れたように光っていて……寝起きのせいか乱れた髪も艶めいて。  おっと何考えてんだ? 俺…… 「どうした? まさか気持ち悪いのか」 「いや、腹減ってさぁ、なんか作ってくれない?」 「えっ」  葉山が戸惑う。なんか変な間があるなと思ったら、ベッドの向こうからのそりと大柄な人が現れた。  えっと……誰だっけ? 「瑞樹の友人だが……何か」  俺が問うより先に教えてもらいコクコクと頷いた。 「俺が作ってやるから、瑞樹はこっちで寝てろ」 「でも……」 「いいから」  というわけで、なんか猛烈に気まずいんですけどぉ……  何故か瑞樹の友人というオッサン(っていったら失礼か)に、雑炊を真夜中に作ってもらうことになった。 「ありがとうございます。いただきます!」  ソファのテーブルに正座してそれを食べていると、じっと睨むようにさっきからは見つめられるのは、なぜだ?  この視線に思い当たるのは……  あっ! もしかして俺、『お邪魔虫』!!って奴かー 「別に邪魔じゃないよ。ふっ」  おっ大人の笑みだなぁ。葉山の奴いつの間にかこんなダンディな友人を作ったんだか。まったく読めない奴だよ。 「君はなかなか大物だね。瑞樹のこと会社で頼むよ」 「あっはい! それはもうっ任せてください」  何を頼まれ、何を任せてもらうのか分からいが、葉山のことは大好きだ。純粋に同期として! だからお前が何かを隠そうとしているのなら騙されてやるし、聞かれたくないことは無理強いしない。 「君はいいとして、この彼は……まだ信用がおけないな」 「あっ、ソレは始発で俺が連れて帰りますので」 「ふっやっぱり物分かりいいな。頼んだぞ」  葉山は毛布をかぶったままベッドの上に体育座りをして、オロオロと様子を見守っている。  そんなに心配すんなって、大丈夫だってーいうの。  おどけてウインクしたら、頭をペシっと冗談めいて叩かれた。 「瑞樹に色目つかうなよ」 「そ、宗吾さん……もう」  困った葉山の声。  へぇ『宗吾さん』か……さっきまで滝沢さんって言ってたのに。  ふたりはもしかして恋人? 葉山の恋人は彼なのか。    そう考えると合点がいくけど、いいのかな。  まぁ深く考えるのはよそうか。  葉山がまた前のように笑って毎日会社に来てくれるのが、俺の中では一番さ!  
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