恋の行方 6-1

1/1
前へ
/1917ページ
次へ

恋の行方 6-1

「ちょっと待て! 芽生起きろー! 寝てはダメだ!」 「んっ、パパ~でもメイねむいよぉ。なんかいっぱいあそんだから、くたびれちゃったぁ」 「駄目だ! 駄目だ! 目を覚ませ! 俺と瑞樹の苦労が無駄になるだろう」  三人でいいムードだったのに、宗吾さんが芽生くんの肩を揺すりながら必死に起こし出した。  本当にもう……僕の宗吾さんは、少し……かなり……変かも? 「クスッ」 「あっ瑞樹、笑うなよ。これは死活問題だ。さもないと君だって、今夜いい所で悶え苦しむことになるぞ! 」 「ちょっ……宗吾さんっ、声大きいです!」  慌てて宗吾さんの口を手で塞いだ。その拍子に芽生くんも大笑いした。 「アハハッ、もーパパってば、変なお顔ばかりしていたら、おにーちゃんにきらわれちゃうよ! よーし、もう起きるよ~ねぇ肩車して」  芽生くんの甘えた声に、僕と宗吾さんは顔を見合わせて笑ってしまった。  僕も宗吾さんも、どうやら夜を意識しすぎのようだ! 「おしっ肩車だな、いいぞ!」 「あっじゃあ……僕が荷物を持ちますね」 「さぁそろそろ帰ろう。今日中に段ボールを片づけてしまうぞ」 「はい! 頑張ります!」  そのまま公園を抜けて、宗吾さんのマンションへ戻る。  少し傾いた日差しが、僕たちを優しく促してくれる。  道すがら……まだどこか不思議な気持ちだった。  今日から僕は宗吾さんの家に帰るのか。こんな風にまた誰かと暮らすなんて、暮らすことが出来るなんて……夢みたいだ。  あいつに置いていかれて、今日で1年経った。  一馬……  結局、すれ違いばかりで一度も会えなかったけど、元気にやっているか。  僕は今日、この人に抱かれる──  一馬……  ちゃんと僕を愛してくれてありがとう。  道は逸れてしまったが、やっぱり僕はお前のこと、ちゃんと好きだったよ。誠実で優しくて真面目で、故郷の家族想いで……そこが好きだったからこそ、悔いはない。  九州は遠い。俺のこの気持ち、届くかな。 「……瑞樹、ちゃんとお別れ言えたか」 「え……どうして、分かって」 「だから『以心伝心』だろ」 「そんな」 「君が空に向かってお別れを言っているように見えたからさ」 「あっ……はい。アイツと話していました。僕は今日あなたに──」  その先は夜に──  夜になったら、僕は囁くだろう。  あなたに、思いの丈を伝えるだろう。 「いいよ。その先は夜……二人きりになったら聞かせてくれ」  宗吾さんの魅惑的な笑みに、心臓の鼓動が早くなる。参ったな……こういう時の宗吾さんは、本当にカッコいい。  自分で思っていた以上に、僕は今……宗吾さんに恋している。 「わっ……分かりました」
/1917ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7999人が本棚に入れています
本棚に追加