恋の行方 9-1

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恋の行方 9-1

「瑞樹……やっとだ……やっとここまで来た」 「あっ……」  僕は宗吾さんによってベッドに優しく押し倒され、仰向けに寝かされた。  今宵……このまま最後まで抱かれる覚悟は出来ている。  丁度一年前の今日が、最後に一馬に抱かれた日だった。だから僕の方も、今日がいいと思った。勝手な考えだが、この日に宗吾さんに僕の身体ごと塗り替えて欲しくなった。それに少し前から……宗吾さんに抱かれたいと僕の方も強く欲情していた。  ところが、熱い口づけを交わしながらも、お互い緊張でガチガチだった。  僕も宗吾さんもそれぞれ経験はあるはずなのに、まるでお互い『初めて』のようにぎこちない。  宗吾さんが僕の上で困ったように眉根を寄せる。 「参ったな。もっとカッコよく抱くはずが……上手くいかないよ。なぁ瑞樹……俺がこの日をどんなに待っていたか分かるか」 「……あ……宗吾さんのことを……長く待たせてごめんなさい」 「いやいいんだ。いい経験だった。即物的に欲しくなかった。時間をかけて君の心ごと抱きたかったから」 「心ごと……」 「君のことはバス停でずっと見ていたよ。彼氏に笑いかける笑顔が可愛いなと。だからあの日ひとりで泣いている君を公園で見つけて、とても放っておけなかった。弱っている所につけ込んだ気がして、最初は引け目を感じていたんだ。だから君が俺だけを見て愛してくれるまで待とうと……」 「そんなことないです。僕もあの公園で会った時から……」 「瑞樹……その先をちゃんと言ってくれないか」  宗吾さんが嬉しそうにもう一度熱い口づけをしてきた。  それから続きを舌先で促された。 「んんっ……はっ……」    宗吾さんの熱風で息苦しい程だ。今までにない程の官能的に大人のキスに酔いしれる。 「最初……俺のことどう思っていた?  少しは気になっていた? 」 「あっ……あなたのことが気になっていました。最初から……」 「……ありがとう。俺たち……ふたりで幸せになろう」 「ふたりで……ですね」  パジャマのボタンを外され、優しく開かれた。  素肌が露わになる。  すぐに僕の平らな胸に彼の手が触れてくる。ここまでは宗吾さんとも経験済みだ。  でもこの先は……  心臓の鼓動がドクドクと、もう、うるさいほどだ。  戸惑う僕の手は優しく制され、僕の胸に宗吾さんがガバっと顔を埋めたてきた。  口づけをそこに? と思ったら突然チュッと上に吸われた。  不意打ちの刺激を浴びて、腰がビクッと揺れる。  更に胸の尖りだけでなく乳輪全体を口に大きく含まれた。舌先では小さな粒をころころと巧みに転がされ……左の胸の粒は、彼の大きな手で器用に摘まれたり、指の腹でじれったく転がされていた。    刺激が溜まらない。  もう……ずっと前だ……僕が最後にこんな風に愛されたのは。 「あっ……」  徐々に覆い被さっている宗吾さんの体重がかかってくる。普段は意識しない器官を宗吾さんに何度も何度も吸われて、軽いパニックを起こしそうだ。  でも……僕は宗吾さんに与えられる刺激に付いて行きたい。このまま! 「そう……ごさん、宗吾さん」  何度も何度も、僕を抱きしめ愛撫してくれる、彼の名を呼んでしまう。  それがどうしてなのか、僕の心は知っている。  一馬を思い出さないためだ。  宗吾さんに上書きして欲しいと望んでいるからだ。
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