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恋心……溢れて 2-1
「だっ……大丈夫です」
「そうか」
意識し過ぎないように深呼吸するが、まだ僕は裸で宗吾さんも裸なので、少し抱きしめられるだけでも、素肌が求め合ってしまうようで……猛烈に恥ずかしい。
僕……こんな調子で、この先大丈夫だろうか。
こんなにも居心地のよい場所を知ってしまったら、宗吾さんなしで生きていけなくなりそうで怖い。
「怯えなくてもいい。怖くない」
「あ……」
怖いのは……僕が幸せに慣れてないからなのか。それともあんなに愛を囁きあった一馬に置いて行かれた苦い経験からなのか。
「なぁ瑞樹。俺達はお互いに幸せに慣れていない部分があるよな。俺も一度幸せに見えていた結婚家庭が目の前で突然崩れ去ったのを経験している。『幸せは永遠だ』と言葉で言うのは簡単だが、それがいかに不確かなものかもちゃんと知っている。だからこそ……」
「……だからこそ?」
宗吾さんが何を言おうとしているのか、とても気になった。
じっと彼の瞳の奥を覗き込む。
「幸せが突然消えてしまうことを身を持って体験したことのある俺達だからこそ、きっと上手くいく」
「……はい、宗吾さんとの恋、もう……ずっと続けたいです。僕を……」
駄目だ。この先は少しでも喋ると泣いてしまいそうだ。目頭が熱くなった。
「置いて行かないよ。だから瑞樹、俺を信頼してくれ。俺は瑞樹に信頼されるに値する人間になれるよう努力する。でも俺だけじゃ駄目なんだ。瑞樹の信頼があって初めてそれは成り立つんだ」
「信頼……」
「あぁ信頼して欲しい」
「僕も好きな言葉です」
「俺も瑞樹を信頼するよ」
信頼……信じて頼るということ。
信頼するにはその人物の過去も大事だが、将来に向かって期待を抱くという気持ちが強い。
僕にとって宗吾さんは明るい未来そのものだ。僕が宗吾さんを信じ、宗吾さんも僕を信じる。その積み重ねが『互いの信頼』を生み出し、僕たちの未来を生み出していくのか。
「宗吾さんはやっぱり僕の欲しい言葉をくれます」
「それは……瑞樹のことが好きだからだよ。簡単なことなんだな、素直な気持ちをそのまま伝えていけばいい」
「はい」
「いいね、君の素直な所がとても好きだ」
宗吾さんが僕をもう一度深く抱きしめる。
僕の胸元に宗吾さんが顔を埋めるもんだから、ジタバタともがきたくなってしまた。
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