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恋心……溢れて 2-2
「宗吾さん……もうっ……駄目です」
「少しだけ、このままで。瑞樹には瑞樹のにおいがするな。花のような香りのじゃなくて、これは瑞樹自身が放つ香りだったんだな」
「僕自身の……?」
ずっと、一馬は僕を抱くと……「花のような香り」と言ったが、宗吾さんは「僕自身の香り」だと言ってくれるのか。
なんだか僕が僕らしく生きている証のようで、その言葉が好きになった!
「僕らしくなってきましたか。僕は……ちゃんと生きているんですね」
「そうだよ。そしてこれから俺と一緒に生きていく。俺が毎晩のように君を潤わせてやるからな」
「なっ、宗吾さんの言葉は……もうっ、でもきっと毎晩は無理ですよ」
「ん? 何でだ?」
「だって明日は芽生くんと朝まで一緒にと約束しちゃったので」
「うー」
宗吾さんが悔しそうに唸った。でもすぐに気持ちを切り替えてくれたようで、僕の前髪をかき分け、そこに優しい口づけを落としてくれる。
「芽生のことも愛してくれて嬉しいよ」
「はい、二人とも大好きです!」
「少し眠ろう。寝不足だと芽生につっこまれそうだしな」」
「ですね。あ……じゃあ僕、自分の部屋に戻りますね」
それがお互いのためだと思ったのに、宗吾さんは不服そうに僕に腰に手を回して、行かせないように動きを制した。
「つれないことを。初夜だったんだぞ。朝までここにいてくれよ」
「初夜って、そんな……」
「俺はそのつもりだったけど」
「もうっ」
「あーでも、一応パジャマ着ておくか」
「その方がよいかと」
起こされ、もう一度躰を拭いてもらった。宗吾さんはシーツも整えてくれた。
「ごめん、シャワーは朝でいいか。芽生の部屋と近いし、少しも離れていたくないんだ。今日だけは……」
「はい、もう綺麗にしてもらったので……」
宗吾さんがまるで芽生くんに服を着せるように、僕にパジャマを優しく着せてくれた。
なんだか小さな子供に戻ったみたいに扱われて恥ずかしいのに、どこか心地よかった。
守られている。……頼ってもいい人がすぐ傍にいることが嬉しくて。
夏樹が生まれてから甘えることを自分でやめてしまった。母も父も少しも変わらず僕を愛してくれて、いつだって両手を広げていてくれたのに……急にいなくなってしまった時に、もっと甘えておけばよかったと後悔した。
函館では素直に甘えられなかった。広樹兄さんもお母さんも優しくしてくれたのに、一線を先に引いたのは僕の方だ。
だからこそ、僕は宗吾さんに素直に甘えたいと思った。
「おいおい随分可愛い顔をするんだな。いつも可愛いが、今日はいつもより幼い可愛さだぞ。参ったな」
「そっそうですか」
「そうだよ、沢山甘えてくれよ。俺には」
「はい」
お揃いのパジャマで、くっつきあった。
今度は日光の香りがする清潔な温もりになった。
宗吾さんは今度は僕をぬいぐるみのように抱くから、なんだか僕もぬいぐるみになったように、スヤスヤと眠りに落ちてしまった。
****
「パパー!おにいちゃん!おはようー!!」
次の瞬間、僕たちの間に潜り込んできたぬくもりを受けとめ、飛び起きた。
「わっ、芽生くん、おはよう!」
「ふふっ、やっぱりここにいたんだねー大きなベッドはどうだった?」
「ぐっすりだったよ」
幸せな朝を僕は迎えていた。
この家で、愛する人に囲まれて──
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