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恋心……溢れて 5-1
「パパーおにいちゃん、おはようー」
「おはよう! おっ芽生~偉いな。ひとりで起きられたのか」
宗吾さんと甘い「お・は・よ・う」のキスをし終えて見つめ合っていると、突然寝室のドアがバタンと開いて、芽生くんが飛び出してきた。
うわっ……危なかった!
「パパ! 抱っこー」
「おうっ」
宗吾さんに僕の目線まで抱っこしてもらった芽生くんが、僕と宗吾さんの顔をじっと交互に見つめてくる。
な……何か変? 何もついていないよな。こっそり唇に手をあてて確認してしまう始末だ。
「あぁ~ずるいなぁ。パパたち、今、何食べていたの?」
「え?」
「いいなぁ。ボクも食べたいなぁ」
「ん? 何も食べていないよ」
「うそだぁ。だって二人とも甘いもの食べた後のお顔してるもん」
「えぇ!」
思い当たらないので優しく否定したのに、逆にギョッとなることを言われた。子供って目敏い!
「へ?」
宗吾さんと顔を見合わせてしまった。
確かにお互いの顔が綻んで、しまりなさすぎかも?(特に宗吾さん! )
「甘いものは幸せな味だってパパ言っていたよね。だからしあわせそうなお顔している。ねぇねぇ何を食べたの? ボクも欲しいよー」
芽生くんだけ仲間外れにするわけではないが、宗吾さんとの口づけの事だと思うと、どう答えていいのかわからない。すると宗吾さんは明るく笑って、芽生くんのホッペにチュッとキスをした。
「しょうがないな。ほらこれだ」
「わ!パパってば、くすぐったいよ」
「瑞樹もほら」
「えっあ、はい」
芽生君の左頬に宗吾さんがキス……右頬には僕からのキスをした。
「わ! しあわせのサンドイッチだー! そうだ! パパ、今度またサンドイッチ作ってピクニックにいこうよ」
「おぅいいぞ。さぁ早く制服に着替えておいで」
「はーい! 」
「あっ手伝ってあげるよ」
「大丈夫だよ~ボクはもう年長さんだから自分でできるよ。お兄ちゃんはほら、パパのお世話しないと」
「えっ!」
芽生くんが何でも知っているみたいに言うから、猛烈に照れ臭い。
実際まだ幼稚園児の芽生くんが、宗吾さんと僕が同性同士、仲良く暮らすことの意味を分かっているのか不安になる。でも芽生くんはとても広い心を持っているようで、いつだって僕を安心させてくれるし、宗吾さんを励まし(後押し?)してくれる。
本当に君はすごいよ。
そうか、この1年かけて成長したのは、僕だけじゃない。
僕を取り囲むすべての事柄がグングンと伸びているのだ。
植物が樹木が生長するのと同様に、人も成長していく。
成長は身体的なものだけでない。
心も成長する。
僕のずっと本当は弱かった心……
もっともっと成長させていきたいと願う朝だった。
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