恋心……溢れて 5-1

1/1
前へ
/1917ページ
次へ

恋心……溢れて 5-1

「パパーおにいちゃん、おはようー」 「おはよう! おっ芽生~偉いな。ひとりで起きられたのか」    宗吾さんと甘い「お・は・よ・う」のキスをし終えて見つめ合っていると、突然寝室のドアがバタンと開いて、芽生くんが飛び出してきた。  うわっ……危なかった! 「パパ! 抱っこー」 「おうっ」  宗吾さんに僕の目線まで抱っこしてもらった芽生くんが、僕と宗吾さんの顔をじっと交互に見つめてくる。    な……何か変? 何もついていないよな。こっそり唇に手をあてて確認してしまう始末だ。 「あぁ~ずるいなぁ。パパたち、今、何食べていたの?」 「え?」 「いいなぁ。ボクも食べたいなぁ」 「ん? 何も食べていないよ」 「うそだぁ。だって二人とも甘いもの食べた後のお顔してるもん」 「えぇ!」  思い当たらないので優しく否定したのに、逆にギョッとなることを言われた。子供って目敏い! 「へ?」  宗吾さんと顔を見合わせてしまった。  確かにお互いの顔が綻んで、しまりなさすぎかも?(特に宗吾さん! ) 「甘いものは幸せな味だってパパ言っていたよね。だからしあわせそうなお顔している。ねぇねぇ何を食べたの? ボクも欲しいよー」  芽生くんだけ仲間外れにするわけではないが、宗吾さんとの口づけの事だと思うと、どう答えていいのかわからない。すると宗吾さんは明るく笑って、芽生くんのホッペにチュッとキスをした。 「しょうがないな。ほらこれだ」 「わ!パパってば、くすぐったいよ」 「瑞樹もほら」 「えっあ、はい」  芽生君の左頬に宗吾さんがキス……右頬には僕からのキスをした。 「わ! しあわせのサンドイッチだー! そうだ! パパ、今度またサンドイッチ作ってピクニックにいこうよ」 「おぅいいぞ。さぁ早く制服に着替えておいで」 「はーい! 」 「あっ手伝ってあげるよ」 「大丈夫だよ~ボクはもう年長さんだから自分でできるよ。お兄ちゃんはほら、パパのお世話しないと」 「えっ!」  芽生くんが何でも知っているみたいに言うから、猛烈に照れ臭い。  実際まだ幼稚園児の芽生くんが、宗吾さんと僕が同性同士、仲良く暮らすことの意味を分かっているのか不安になる。でも芽生くんはとても広い心を持っているようで、いつだって僕を安心させてくれるし、宗吾さんを励まし(後押し?)してくれる。  本当に君はすごいよ。  そうか、この1年かけて成長したのは、僕だけじゃない。  僕を取り囲むすべての事柄がグングンと伸びているのだ。  植物が樹木が生長するのと同様に、人も成長していく。  成長は身体的なものだけでない。  心も成長する。  僕のずっと本当は弱かった心……  もっともっと成長させていきたいと願う朝だった。
/1917ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8000人が本棚に入れています
本棚に追加