恋心……溢れて 7-1

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恋心……溢れて 7-1

芽生くんのお迎えを頼まれていたので、仕事は早めに切り上げた。  帰り際に給湯室を覗くと、菅野が鼻歌を歌いながら上機嫌で自分のマグカップを洗っていた。 「管野、悪い。お先に」 「お疲れ~葉山もご機嫌だな」 「そうかな。あっ、さっきは引越祝いありがとうな」 「アレちゃんと使えよ~お手入れも大事だぜ」 「わっ分かった」  なんとなく含み笑いされているような気がして動揺してしまう。  僕の家に泊まった時に宗吾さんとの深い関係を、やっぱり気づかれたのかもしれないな。 「おいおい、んな不安そうな顔するなって。何の心配もいらないよ。俺さ、葉山の笑っている顔を見るのが好きなんだ。だからお前が幸せでいてくれれば、それでいい」 「……いいのか、信じても」 「あぁ信じてくれよ。お前、ちょうど去年の今頃だったか……特に3月と4月は酷い顔していたもんな。泣き叫びたいのを我慢しながら笑っているような、寂しい笑顔ばかり浮かべていたな。あれはそっと見守る方も大変だったぞ」 「え……」  去年の冬から春にかけて……僕はちょうど一馬から決定的な別れを切り出され、そして別れの当日を迎えた。プライベートは持ち込みたくないと、会社では必死にいつも通りにしていたつもりだったのに、見破られていたのか。 「……そうか」 「そういうこと! だから今のお前を見ているとホッとするよ。いい方向に変わったな。それにちゃんと自分の言いたいことをハッキリ発言できるようになって良かったな。あのバカ後輩にピシャリと意見を言うのいい! あれさぁ~冷たくて震えるぜ。あれ? 俺ってもしかしてMか~」 「おい!」 「とにかく幸せで何よりだな。そういえばアイツの作った雑炊うまかったな。そのうち俺を新居に呼んで、もてなして欲しい。なっいいだろ? また旨いもん食わせてくれよ」 「んーそれはどうだろう? ……あんまり、いい顔しないかもよ」 「いんや、その引っ越し祝いを見せたら逆に感謝されるさ。それ、ちゃんと帰ったらアイツにも見せるんだぞ」 「うん? 分かったよ」  こんな何の変哲もないアイマスクを宗吾さんが見て喜ぶのかな。  宗吾さんが感謝する?    まったく菅野はおもしろいな。そしてあったかくて信頼の出来る気のいい奴だ。  首を傾げながらも、安心した気分で帰途についた。
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