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さくら色の故郷 21-2
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昼食後は実家に一旦戻った。
「そろそろ移動するか」
「あっこの後の予定は……本当に大沼に?」
「あぁ大沼だ、墓参りに行こう」
宗吾さんに言われて、ドキっとした。
冬に叶わなかった事……
宗吾さんのお母さんと芽生くんと共にお墓参りをする。
それを叶えてくれるつもりだ。
嬉しい。せっかくここまで来たのだから皆で行きたかった。
「瑞樹、私たちはお店もあるし、この前お墓参りさせてもらったので、この先は4人で行ってらっしゃい」
「お母さん……」
「もう、そんな顔しないの、ほらこれを持っていきなさい」
お母さんが渡してくれたのは赤いカーネーションだった。
「あなたのお母さんにお供えしてあげて」
「えっ……でも確か亡くなった人には白いカーネーションだと」
「いいのよ。瑞樹は、きっと白じゃなくて赤いカーネーションをお供えしたいと思ったの。違う?」
びっくりした。お母さんには何でもお見通しだ。
生きている時……僕が母にカーネーションを贈った記憶はない。
朝……赤いカーネーションの花束を、函館の母と宗吾さんのお母さんに贈った時、ふと込み上げた寂しさをちゃんと汲んでくれていた。
「ありがとう。お母さんが作ってくれたこれを、お供えしてくるよ」
「お願いね。この前も報告したけど『瑞樹はとってもいい子に成長しました。そしてますます幸せになっています』って、報告してきてね」
赤いカーネーションの意味は『母への愛』だ。
「瑞樹、そういえばアメリカでは、亡くなった母親を偲んで母の日を過ごす習慣があったぞ」
宗吾さんが優しく僕の肩に手を置いてくれる。そのぬくもりが心地よい。
「母の日に母を偲ぶ?」
「あぁ母の日には子どもが墓前に集まって鮮やかな花を手向けて、ピクニック気分で賑やかに過ごす習慣があると、以前出張で行った時に教えてもらった。まさに今日はそれだな」
「……はい」
「瑞樹くん、宗吾の言う通りだわ。残された息子が幸せに元気に過ごしている姿を見せることで、亡くなったお母様も安心するでしょうね。何よりの贈り物よ。ぜひ私もご一緒させてね」
まだ少し母の日には早いが、まさにそれだ。
大沼で僕がしたかったのは、僕が幸せな姿を墓前で見せる事だ。
優しい想いが集まっている、ここには……
「みんなが僕のことを考えてくれて……幸せです……本当にありがとうございます」
あとがき (不要な方はスルーで)
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こんにちは。志生帆 海です!
いつもスターやペコメ、ページスタンプなどで、創作の応援をありがとうございます。執筆の励みになっています。
細切れの時間で毎日更新しているため、誤字脱字、誤変換がありまして申し訳ありません。気づいた時にはすぐに修正しておりますが……
都内は本当に緊迫しており外に出る事も殆どしていないので、気が滅入りそうですが、読者様の優しさに救われています。
せめて創作の中では、彼らと共にいろんな場所に移動して、旅や会話を楽しみ大いに触れ合って、楽しく過ごしたいです。これからも、よろしければお付き合いくださいませ。
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