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さくら色の故郷 22-2
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カーネーションを抱いて写真に写った瞬間に、心に声が届いた。
『瑞樹、ありがとう。嬉しいわ……あなたは私にカーネーションを贈ったことがないと思っているけれども……違うわ。ちゃんともらったの。夏樹と一緒にお小遣いを握りしめて買いに行くと約束していたのよ。あの年の母の日には……その気持ちをもらったのよ。その花束を持ってきてくれるのね。あなたの家族を紹介してね。お墓で待っているわ』
天国からそんな声が聴こえたような……
「お母さん……?」
天を仰げば、青空に満開の桜がせり出して、空が桜色に染まっていた。
桜色って……母の愛情の色と似ている。
色で表現したらこんな感じ?
淡く色づく優しい色に溶け込みたい。
「あーあのさ、瑞樹、実は俺からも土産があってさ」
「潤から?」
びっくりした。ソフトクリームを奢ってもらっただけでなくお土産まで?
潤は本当に変わったな。すごくいい方向に向かっている。兄として純粋に嬉しいよ。
「何だろう?」
「これだよ」
手渡されたのは苗木だった。
「え……これって」
「花水木さ」
「大沼に植えて来いよ」
「え……」
「ペンションの庭にでも植えさせてもらえよ」
「そんな勝手に……いいのかな」
「いーだろ、それ位、広いんだし」
軽井沢のローズガーデンで働く潤らしい贈り物だ。
「これ北海道でも育つ?」
「あぁハナミズキを庭植えで育てられるのは道南部から道央部までと言われているから大丈夫だって。軽井沢では苗木の庭植えの植えつけや植えかえは4月に行うけど、北海道なら今の時期でいいだろう。ただ寒さにそこまで強くないから、北風を避けたところに植えてこいよ」
「うん、分かった!」
すっかり詳しくなって……もう僕より詳しいな。弟の成長や心遣いが嬉しくて堪らない。
「花水木か、潤、お前やるな。まさに瑞樹の花じゃないか」
「そうねぇ。瑞樹の分身を置いてらっしゃい」
お母さんと広樹兄さんの言葉に背中を押してもらい、僕は大沼に移動する。
大沼に一泊してそのまま東京に戻るので、今回はここでお別れだ。
「ありがとう!また来ます」
「あぁ今度は違う季節に来いよ」
「そうだね。宗吾さんたちにはいろんな函館を見てもらいたいよ」
「じゃあ冬景色も見てもらえ。北海道の冬はいいぞ」
「うん……お母さん、兄さん、潤、ありがとう! 本当にありがとう!」
感謝の気持ちで満ちた、帰省だった。
僕はずっと……こんな風になりたかった。
ずっと……その夢が叶った。
宗吾さんが叶えてくれる。
僕が愛した人が、幸せを運んでくれる。
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