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さくら色の故郷 27-2
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「いただきます!」
「おう! 沢山食べろよ」
墓参りから戻ってきた瑞樹の目元が赤かったが、幸せそうに微笑んでいた。
瑞樹……嬉し涙なら、いくらでも流せよ。
お前には幸せな顔が似合うよ。
お前さ……小学校の時、本当に可愛かったんだぞ。
いつも5歳下の弟の手を握っていたな。
俺はよく覚えているよ。
お前がどんなに両親に愛されて育ったのか。
だから余計に瑞樹が一度に家族を失った事が……悲しかった。
函館に行ってしまい、ずっと姿を見せない間……どんどん周りからお前の話題は消えてしまったが、俺は違ったよ。
だって俺の家は、瑞樹の家だったから。
廊下に父さんが飾った写真パネルには、いつもお前と弟がいた。
いつか俺に幸せな姿をきっと見せてくれると……信じて待っていた甲斐があったな。
「宗吾さん。お酒飲みますか」
「あぁもらおう、何がいと思う?」
「そうですね。やっぱり北海道の生ビールがオススメです」
「いいね」
「セイ、ごめん。生ビールいいかな?」
「おう」
随分と甲斐甲斐しく尽くしてんなー
「瑞樹、明太子のパスタが上手そうだぞ。ほら皿を貸せ」
「あっはい」
「沢山食べろよ」
「ありがとうございます」
いや、尽くされているのか。
ぷぷ、なんかお似合いだな。
正直さ、瑞樹の恋人が男っていうのは驚いた。
ここは田舎だから特にな。
でも、こんなにも幸せそうな顔をする二人を見ていたら、まぁいいかって気分になるぜ。
おまけに相手の母親と息子公認ときたら、文句のつけようがない。
瑞樹の幸せは、お前の努力の賜物だよ。
お前が幸せなら、一番だ。
『セイ……セイっ』
小学校の頃の甘い呼び声が聴こえてくる。
可愛かった瑞樹は、もっと可愛くなって戻ってきた。
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