さくら色の故郷 34-2

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さくら色の故郷 34-2

****  「じゃあ、セイ、ありがとう!」  木下牧場までセイのバンで送ってもらった。夕方の飛行機まで時間がたっぷりあるので、これから大沼をゆっくり観光する予定だ。  まずは午前中は牧場で過ごし、ランチはとっておきの場所を予約している。その後大沼湖畔をサイクリングして名物のお団子をおやつに食べてと楽しい予定が満載だ。 「おー瑞樹とそのご一行様、待っていたよ」 「キノシタよろしくな。こちらは宗吾さんと宗吾さんのお母さんと息子の芽生くんだよ」  大沼で過ごした時、セイとキノシタとオオクボで飲む機会があった。その時に皆も察したのだろうか。僕が誰を待ち……誰の元に帰りたがっているのか。  直接、男性と付き合っているとは話していない。(セイには後にバレるが)だが通じていたようだ。だから僕も隠さない。恥じることではないし、この3人はずっと僕のことを心配し、僕の幸せを願っていてくれていたから信頼している。 「瑞樹と小学校の同級生の木下です。よろしくお願いします。って宗吾さんって、いやー噂通りもの凄く格好いいですね。さっきオオクボが騒いでいたの分かるな」  うっまただ。ここに来て宗吾さんモテすぎないか。  しかも僕と全くタイプの違う大柄な男たちに……いやいや彼らはもう結婚して子供もいる身だし、そんなはずないのだが。  キノシタにも「宗吾さんって惚れちまいそうなほどかっこいいな」とささやかれたし、焦ってきた。  宗吾さんは確かにカッコいい。ちょっと変な時もあるけれども、決めるときはビシッと決めるから文句なしだ!    『駄目だ。宗吾さんはもう僕のものだ!』と声を大にして言いたい気分だった。  僕にこんな独占欲があるなんて、知らなかった。函館と大沼……故郷で過ごすうちに、僕の心にも欲が芽生えてしまったのか。  宗吾さんに囁かれる。 「瑞樹。もしかし妬いてくれた?」 「えっ」 「さっきから拗ねた顔してる」 「していません!」 「ふっ、俺が嫉妬する気持ちが分かっただろう?」  宗吾さんが甘く微笑む。もう……ズルい、そんな顔。 「……ですね」 「俺は瑞樹のものだよ。そして瑞樹は俺もの。あっ束縛とかじゃなくて、心の話な」 「はい……でもやっぱりずるいです」 「ん?」 「そうごさんのその逞しい躰が羨ましいです。僕も憧れます」 「ははっ俺って男にモテるんだな。知らなかったよ」 「もう!」  そんな会話をこっそりしていると、キノシタに授業中に喋る子供みたいに怒られた。 「おーい。乳しぼりのやり方、ちゃんと聞いておけよ。そこの熱々なお二人さん!」  こんな会話を宗吾さんと出来るなんて。  また一歩関係が深まったようだ。  もう僕は解き放たれている。  心がどんどん軽くなっている。  見上げれば青空。  白い雲がぽっかりと浮かんで流れていく。  目にも眩しい牧草地に僕たちはしっかり立ち、肩を寄せ合って笑っている。 あとがき(不要な方はスルーで) **** 志生帆海です。こんにちは! 5月の連休ですね!今年の連休はきっと忘れられない時間となるでしょうね。 いろんな絆を深める時期なのかもしれません…… そしてお忙しい中、いつも創作の応援をありがとうございます! 毎回スターやスタンプをいただく度に、この物語は沢山の方に支えられているなとじーんとします。そして私自身の執筆活動のやる気に繋がっております。 これからも私の萌えを注ぎ込み、皆さまにも、ほろりとしたり、クスっとしていただけるような心温まる物語をお届けできたらいいなと思います。そんなわけでここ最近少しコメディチックな明るい話です。 物語の中の函館旅行も最終日です。もう少しだけお楽しみくださいませ♡
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