7927人が本棚に入れています
本棚に追加
花束を抱いて 3-1
深まる口づけ、淡い口づけ、優しい抱擁を、繰り返してもらった。
普段はどこまでも男らしく精悍な印象の宗吾さんだが、僕を抱く時はどこまでも優しい。
愛に満ちている……そう感じる営みだった。
だから好きだ。あなたが好きだ。
僕にとって新しい1年が始まる幕開けは、宗吾さんを躰の奥深くに受け留めることから始まった。
去年はまだ出逢ったばかりで、宗吾さんとこんなにも深い関係になるとは思ってもみなかった。
日付を跨ぎ年齢を跨いで……愛されて思うことは、ただ一つ。
この世に生まれて来てよかった。
生きていて良かった。
宗吾さんに出逢えてよかった。
「俺達……今、同じこと考えているな」
「はい……きっと」
額をコツンと突きあわせ、微笑みあった。
なんて優しい時間なんだろう。
函館旅行の余韻に浸りながら、こんなにも優しく抱かれるなんて。
事後も、やわらかな余韻に、ふたりで浸った。
裸の肌を触れ合わせると、何ともいえない温もりとしあわせが生まれ、ホッとした。
満ち足りた心地で息を吐くと、宗吾さんが優しく胸に抱きしめてくれた。
「瑞樹、しあわせそうだな」
「はい、しあわせです」
僕が……こんなにも息を吐くように自然に、この台詞が言えるなんて──
感慨深くて、思わず涙が浮かんでしまった。
「また泣く」
「あっ、すみません」
「また謝る」
「あっ」
「いいよ、瑞樹らしい」
彼が舌先で目元を拭ってくれる。
涙は消え去り、彼が触れた場所に温もりだけが残る。
ほっとしたのか、眠気を感じて疲れが急に押し寄せてきた。
「眠くなったか」
「……少しだけ」
「もう、休め」
宗吾さんが指の腹で僕の目元を拭い、頬を撫でてくれた。
それから少し汗ばんだ髪を優しく……僕が寝付くまで何度も何度も梳いてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!