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選び選ばれて 1-2
「さーて仕事、仕事! 瑞樹も頑張れよ」
「あぁ!」
部署に入るともう皆、集まって来ていた。
「すみません、お待たせして」
「大丈夫だ。さぁ取り掛かるぞ」
「はい!」
今日のウエディングは若いモデルの女の子と年上有名俳優との結婚で、今時珍しい大規模なものだ。
僕は新婦、つまり若いモデルの女の子専属のBridal Coordinate (ブライダルコーディネート)のひとりだ。
幸せの宴を華やかに彩る結婚式には、様々な花が必要となる。ブライダルフラワーブーケはもちろん、ウェルカムボードやパーティデコレーションフラワーまで、トータルで依頼されていた。
新郎新婦の希望にかなった最高のブライダルフラワーを、打ち合わせを元に作り上げていくのは、人生の門出を請け負う一大仕事で気合が入る。しかも今日の宴会場には報道も入るとのことで、皆、ピリピリしていた。
僕の方も……指先が白くなっていた。
この指、スムーズに動くかな。
すっかり忘れていたが……あのおぞましい事故の後遺症で苦しんことを思い出すと、突然怖くなってしう。きっとあの事件以降、ここまで大規模の仕事の依頼が初めてだから緊張しているのだ。
(落ち着け! 瑞樹……大丈夫だ)
こんな風になると、いつも宗吾さんの声が聞こえてくる。だから宗吾さんと芽生くんの顔を思い浮かべて、心を落ち着かせた。
「ほら急げ!」
「はい! 金森も行くよ」
準備してあった花材を車に積み込み、会場であるホテルオーヤマに移動する。すると車の中で……部下の金森が小声で余計なことを話しかけてきた。
「しっかし葉山先輩も役得ですよね。若い売れっ子モデルの専属担当だなんて、大抜擢ですよ」
「……うん、ありがたい申し出だったよ」
「で、どうです? 彼女……胸おっきいですよね。顔は可愛い系なのに……アンバランスで……間近で見ているとムラっとしませんか」
「金森くんっ……私語には気を付けて! それに新婦さんに失礼だから二度と口にしないで欲しい」
はぁ……すっかり忘れていたけれども『金森鉄平』という部下は、無駄に口が達者だ。
それに僕は、そんなことには……少しも感じない。
僕が感じるとしたら、宗吾さんが触れてくれる時だけだ。
あの逞しい手で、直接胸を弄られたり躰を撫でまわされたりすると、途端に……淫らに感じてしまう。一昨日だって僕たちは深く抱き合い……日を跨いで繋がっていた。
「あー葉山先輩だって、ニヤついているクセにズルイな。オレだけ叱ってさぁ」
「えっ! あっ……」
どうやら僕は、まだまだ精進が足りないようだ。というか、僕もどんどん宗吾さん化しているのか……っ!こんな場所であんな妄想するなんて。
「わ。悪い……」
トホホと苦笑しながら侘びると、金森の方も釣られて笑っていた。
「先輩は、やっぱ笑った方が断然可愛いっす」
「おいっ」
「よかったです。だってさっきからずっと緊張して……手が強張っていたので、心配しましたよ」
金森は口は悪いが、悪い奴ではない……
「……あっ、ありがとう」
「先輩! 今日は力を合わせて頑張りましょう!」
だが……こんな風に手をガシっと握られ摩られると、困ってしまう!
「ほらほら、先輩。解してあげますよ」
「いっいらないから! もう離せっ!」
あとがき(不要な方はスルーしてください)
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今日から少しお仕事モードの瑞樹で、話をサクサク進めていきます。
でも……随所に萌えを盛り込んでいきたいと思いますので、応援していただけたら嬉しいです!
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