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選び選ばれて 2-2
「先輩、次は何を?」
「あぁチャペルの装飾に行こう」
「分かりました。これを運べばいいですか」
「そうだよ」
ホテルの庭園チャペルに、金森と大荷物を持って移動する。
「金森くん、転ばないようにね。今日は……花の代わりがあまりないから」
夜、雨が少し降ったのか、チャペルへの小路が滑りやすくなっていた。何となく嫌な予感がして声をかけたら、背後でベシャっと嫌な音がした。
「おいっ、大丈夫か」
口は達者なのに……動作がもしかして鈍いのでは?
蛙みたいに金森がひっくり返っていた。
「あっ花が!」
「あぁぁぁ!」
金森に持たせていた花が水たまりに浸かっていた。真っ白な白薔薇が泥色に染まる。
「まずい!」
「あぁどうしよう」
呆然としてしまった。結婚式当日に、今から活け込む花を泥水に20本も浸してしまうなんて。予備の花で補えない……足りない。
「けっ怪我はないか」
「葉山先輩は優しいですねぇやっぱり」
「ふざけてないで。真剣勝負なんだ。今は……一刻を争うんだ。早く代わりの白薔薇を手配しないと」
「え? でもちょっと浸っただけすよ。洗って使えば」
「駄目だ! 結婚式には使えない!」
少し声を荒げてしまい反省する。こういう時の僕はまだまだだ。
「す、すみません」
「ごめん。怒鳴って……とにかくホテルのフラワーショップを見てくるよ」
「わかりました」
「先にチャペルに運んで、下処理をしておいて」
落ち着け瑞樹。
きっとホテルでも扱っているだろう、汚れてしまった分だけあればいい。
必死に呼吸を整える。
ところが「すみません。あいにく今日に限って……白薔薇は扱っていなくて」と言われ途方に暮れてしまった。
はぁ順調にいかない時って、何もかも巡り合わせが悪くて、ついていないことが続く。
どうしようと悩んでいたら、目の前に見事なまでの大輪の白薔薇の花束を、すっと差し出されたので驚いた。
いつの間にか初老の男性が立っていた。
「これを使いますか。先ほどから白薔薇をお探しのようなので」
「え、よろしいのですか、あのっじゃあお代を」
「いえいえ、これは我が家に咲いていたものですから。お代はいりませんよ」
「こんな見事な白薔薇が咲いているのですか」
「えぇ」
なんて上品な男性なんだろう! まさにロマンス・グレーの紳士だ。
「思い出の白薔薇なので、大切に育てているのですよ」
「そんな大切なものを良いのですか」
「お祝いごとに使ってもらえるのなら、きっと彼も喜びます」
誰とは聞けなかったが、きっとこの男性の身近な大切な人なのだろう。
人は助け合って生きている……
誰かのピンチに手をさっと差し出せるのって、素敵だ。
僕は助けられている。
僕は誰かを助けられているだろうか。
大袈裟ではなく、さっきの青年や、このロマンスグレーの男性のように、困っている時にさりげない気配りが出来たらいい。
(宗吾さん、今、何をしていますか)
彼らの温かい瞳に、僕は宗吾さんを胸の中で思い出していた。
帰ったらこの話をしたい。
宗吾さんともっともっといろんな話をしたい。
仕事の事も語り合いたい。
宗吾さんのことを考えたら、気持ちが落ち着いて来た。
「どうやら、元気が出て来たみたいですね」
「はい! 優しい心に触れたので」
「がんばって! あとで覗かせてもらうよ」
「ぜひ!」
あとがき (不要な方はスルーで)
****
お仕事モードの瑞樹はいつもより男らしいかも!
ちなみに今日瑞樹を救った青年と初老の男性は、私の別の創作内のあの人とあの人でした!お分かりになりましたか。ちょっとしたクロスオーバーを自作品でしてみました。宗吾さんとのラブモードのターンが終わってしまいましたが、いつも沢山のスターをありがとうございます。更新の励みになっております。
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