7930人が本棚に入れています
本棚に追加
選び選ばれて 5-2
すると僕の横にスッと人が立って、さりげなく支えてくれ、もたれさせてくれた。
「えっ?」
「大丈夫? 俺にもたれて」
「あ……すみません」
見上げると、ボディガードの鷹野さんが冷たいペットボトルを渡してくれた。
「俺も今は休憩時間なので気にしないで。あーやっぱ、なんか顔色悪いな。水分取った方がいいよ。今日結構暑いので脱水症状には気を付けて」
「すみません。プロ意識に欠けますよね。こんな場所で大事な仕事中に、ぼんやりしてしまって」
「そんなことないですよ。葉山さんは今日はかなり早朝から準備していましたよね。それにずっとひとりで奮闘していたし……だから、疲れが出て当然ですよ」
「ありがとうございます。じゃあ、いただきます」
太陽のような明るい笑顔に励まされて、ホッとした。少しだけ支えになってもらい水分を取ると、だいぶ具合も落ち着いてきた。
おかしいな。今日の僕は初対面の人に警戒もなく甘えすぎだ。
「あーやっぱ……貧血を起こしそうになる所も似ているな」
「あの、さっきから僕が誰かに似ているって言っていますよね?」
「あぁ実は俺の幼馴染のヨウって奴に葉山さん少しだけ似た所があって。なんだか放っておけなくて……こっちの勝手な事情なのにすみません」
「あの……幼馴染のヨウさんて、もしかして張矢 洋さんでは?」
「え!!」
僕は洋くんと雰囲気が少し似ていると言われていたので……言葉がまたひっかかる。我慢できずに思い切って聞いてみると…、鷹野さんも驚いていた。
もしかして当たり?
「えっえっ! びっくりしたな。もしかして葉山さんって、洋の知り合いなんですか」
「えぇ実は昨年……葉山の海で月影寺の皆さんと仲良くなって」
「うわっ!そうなんですね。月影寺メンバーも知って? うわぁ……いやああ奇遇過ぎるな」
腑に落ちるとは、このことだ。
洋くんとの出会いは僕の人生において縁深い事だったから、こんな偶然がまた起きるのも受け入れられる。
「洋くんは、僕の大切な友人です」
「洋の友達? それっすごくな。葉山さんみたいな人が洋の友達になってくれるなんて……自分のことのように嬉しいぜっ!」
なんだかテンションが上がった鷹野さんにバンバンと背中を叩かれ、ムギュっとハグされた。
「うわっ……!」
「あっ!」
僕の驚きの声と同時に、鷹野さんも変な声をあげた。
視線は、僕でなく遠くを見つめ……
化粧室に行くのだろうか、披露宴会場からひとり出て来たあのモデル男の子と目があった。
「まずいな。葉山さん、また改めて! 今度は洋の所で会いたいですね。その時詳しい事話しますので、今日はこれで。すみません! 」
慌てて僕は引き離され、鷹野さんは足早に彼の元に駆け寄った。
何だかこの状況って……
僕……悪いことしたかな。
何か事情がありそうなので、僕も了解の意味を込めて一礼した。
生きていると……
続く縁と続かない縁があることに気づく。
きっと彼らとの縁は続く──
そんな予感に包まれていた。
これはいい縁だ。
だから楽しみだ。
6月になったら北鎌倉に行こう!
宗吾さんと芽生くんを誘って、遊びに行きたい。
きっと紫陽花が綺麗だろう。
こんな風に先へ先へと……
未来を楽しみにできる事が、今、とても嬉しい。
あとがき(不要な方はスルーでご対応願います!)
****
今日は『重なる月』と、ちょこっとリンクさせてみました。
安志もあちらでも、いろいろ活躍しております♪
この話……『重なる月』の方で、このモデルの彼視点で書いてみたいです。
プチ嫉妬かも?(未読の方にはネタばれになりますのでモデルの名前は伏せました)そろそろ卵ボーロを作っている宗吾さんの元へ、瑞樹を帰さないと!ですね。
最初のコメントを投稿しよう!