選び選ばれて 6-1

1/1
前へ
/1902ページ
次へ

選び選ばれて 6-1

「葉山、お疲れさん」 「リーダー!」 「大丈夫か。途中、具合が少し悪そうだったが……」 「あっ」  さっき途中で抜けたのを見られていたのかと思うと、気恥ずかしくなり俯いてしまった。 「すみません。体調管理不足です。長い休みをいただいたのにカッコ悪いです」 「いや、今日はオレでも疲れたからな。それにしても規模が大きすぎる結婚式だったな」 「……フォローありがとうございます」 「さぁ君は明日も仕事だろう。しっかり休んで来い」 「はい!」 「よし、じゃあ今日はもう帰っていいぞ」 「お疲れ様でした」  スタッフ控室に行くと、また鷹野くんと会った。彼も仕事が終わったらしい。 「葉山さんも終わりですか。さっきはすみません。話の途中で」 「いえいえ」 「もう体調は大丈夫?」 「お陰様で、なんとか」 「よかった。余計なことをしたかと。でも洋の友達なんて偶然、まだ信じられないな。もしかして月影寺に遊びに行ったことも?」 「ええ、秋にお邪魔して……」  あのハロウィンの強烈な仮装大会の事を思い出したら、口元が勝手に綻んでしまった。 「あれ? 笑うとヨウよりもむしろ……」 「え?」 「あっいえ何でも……あの強烈な兄さんたちとも仲良くなったみたいだな」 「あっはい!」  早く……洋くんだけでなく、翠さんや流さん、丈さん、薙くんとも話したいな。  この1年を通して……僕を取り巻く環境は大きく変わり、新しい出会いが多かった。  一馬との別れは辛かったが『別れがあれば出会いもある』……そう、今となってはしみじみと思う。 「こんな偶然滅多にないから嬉しくて。あのっ洋には俺からも話していいですか」 「いいですよ。僕からも連絡してみます」 「ぜひ! あっ呼び止めてすいません」 「いえお疲れ様です」  鷹野くんとはホテルのスタッフ出入り口で別れた。  本当に爽やかなスポーツマンタイプだな。僕とあまり年齢は変わらないかな。  きっとまた会える。会ってみたい人だ。  さぁ僕も家に帰ろう!  でも……どうしても待ちきれなくて電話をかけてしまった。  宗吾さんのスマホではなく、固定電話に。  僕がかけてみたかった。帰る家があるって感じがするから──
/1902ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7930人が本棚に入れています
本棚に追加