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選び選ばれて 6-1
「葉山、お疲れさん」
「リーダー!」
「大丈夫か。途中、具合が少し悪そうだったが……」
「あっ」
さっき途中で抜けたのを見られていたのかと思うと、気恥ずかしくなり俯いてしまった。
「すみません。体調管理不足です。長い休みをいただいたのにカッコ悪いです」
「いや、今日はオレでも疲れたからな。それにしても規模が大きすぎる結婚式だったな」
「……フォローありがとうございます」
「さぁ君は明日も仕事だろう。しっかり休んで来い」
「はい!」
「よし、じゃあ今日はもう帰っていいぞ」
「お疲れ様でした」
スタッフ控室に行くと、また鷹野くんと会った。彼も仕事が終わったらしい。
「葉山さんも終わりですか。さっきはすみません。話の途中で」
「いえいえ」
「もう体調は大丈夫?」
「お陰様で、なんとか」
「よかった。余計なことをしたかと。でも洋の友達なんて偶然、まだ信じられないな。もしかして月影寺に遊びに行ったことも?」
「ええ、秋にお邪魔して……」
あのハロウィンの強烈な仮装大会の事を思い出したら、口元が勝手に綻んでしまった。
「あれ? 笑うとヨウよりもむしろ……」
「え?」
「あっいえ何でも……あの強烈な兄さんたちとも仲良くなったみたいだな」
「あっはい!」
早く……洋くんだけでなく、翠さんや流さん、丈さん、薙くんとも話したいな。
この1年を通して……僕を取り巻く環境は大きく変わり、新しい出会いが多かった。
一馬との別れは辛かったが『別れがあれば出会いもある』……そう、今となってはしみじみと思う。
「こんな偶然滅多にないから嬉しくて。あのっ洋には俺からも話していいですか」
「いいですよ。僕からも連絡してみます」
「ぜひ! あっ呼び止めてすいません」
「いえお疲れ様です」
鷹野くんとはホテルのスタッフ出入り口で別れた。
本当に爽やかなスポーツマンタイプだな。僕とあまり年齢は変わらないかな。
きっとまた会える。会ってみたい人だ。
さぁ僕も家に帰ろう!
でも……どうしても待ちきれなくて電話をかけてしまった。
宗吾さんのスマホではなく、固定電話に。
僕がかけてみたかった。帰る家があるって感じがするから──
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