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選び選ばれて 9-1
「瑞樹、俺と芽生は風呂に入って来るから、眠いなら先に休んでいいぞ」
「いえ、まだ大丈夫です。起きて待っています」
夕食に少し日本酒を飲んだせいかな……本当は少し眠かった。でもまだ芽生くんと遊びたいし、宗吾さんに今日の出来事をいろいろ話したい。
そう思うと、寝てしまうのは勿体なかった。
「おいおい瑞樹、そんなに一度に欲張らなくても大丈夫だ。これから俺たちはこんな毎日を積み重ねていくから……しあわせは逃げないよ」
宗吾さんからの優しい言葉。
「おにいちゃん、パパのいうとおりだよ。すこしオネムみたいだよ」
芽生くんからの可愛い一言。
僕はこんなに甘やかされてもいいのかな。
「いいんだよ。さぁ少し横になろう」
「はい……」
心の声が届く。いつも宗吾さんには届いている。それが分かると、ますます躰から力が抜けてしまう。
「さぁ行こう」
手を引かれ、宗吾さんのベッドに寝かされた。
今日は自分の部屋でと思ったのに、いいのだろうか。
「あの……」
「ん? さぁ布団に入って」
「でも……」
結局促されるがままに、ベッドに横たわってしまった。
宗吾さんが掛け布団をかけなおしてくれる。
なんだろう、こんな風に寝かしつけてもらうのって、久しぶりで照れてしまう。
ふわっと薄い布団があたたかな空気をはらんで頬を掠めると、しあわせに包まれているような気持ちになった。
宗吾さんがベッドサイドに腰かけて、僕の髪を撫でてくれる。
どこまでも優しく暖かい手つきに、安堵のため息が漏れた。
「明日はいつも通りか。それともまた早いのか」
「午前中は内勤なので、いつも通りです」
「そうか、ならいいか」
「え?」
「いや、何でも。とりあえず休め」
宗吾さんが僕の髪を指に巻き付けて遊び出した。彼の癖かな……なんだか指先から伝わる愛情にトキメイテしまうよ。
ホッとしたせいか、ますます眠くなる。
「宗吾さん……少しだけ……仮眠させてもらいますね。あとで絶対に起こしてください」
「あぁそうするよ」
「まだ話したいことがあって」
「わかった。後で聞くよ。俺の希望も聞いてくれるか?」
「えぇ、それもあとで」
頬を掠める程度のキスを落とし、電気を消された。
僕の瞼も……もう、くっつきそうだ。
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