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選び選ばれて 9-2
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「パパーおにいちゃん、もうねちゃうの?」
「あーそうだな。とにかく今は眠たそうだったな」
「おしごとって、たいへんなんだね」
芽生に聞かれたので、瑞樹の仕事の内容を少し話してやると、幼心にも納得したようだった。
「さぁ芽生はパパと風呂入るぞ」
「わかった! パパーのことボクがあらうね」
「はは。そんなことしてくれるのか」
「うん、パパと入るのひさしぶりだもん」
まだお腹がぽっこり出ている幼児体型の芽生が、泡だらけのスポンジで背中をこすってくれる。
「なぁ芽生……俺達、男同士でよかったな。瑞樹も含めて、ずーっと一緒に風呂に入れる仲だもんな」
「そっか、ボクが女の子だったら?」
「そうだな。小学校4-5年生になったら入れないだろうなぁ」
「おにいちゃんとも駄目?」
「あたりまえだ!」
「そっか、じゃあ、おとこ3人っていいね」
男同士っていいな。そう思うとますます上機嫌になった。
「パパぁボクもパパたちのベッドでねてもいい?」
「あっ……ああ、いいよ」
可愛い息子の頼みだ、断れない。
寝る支度を整え、寝室のベッドサイドのランプをつけると、瑞樹が横向きになって寝息を立てていた。
「おにいちゃん、ぐっすりだね」
「あぁ、さぁ芽生も寝るぞ」
「うん、ボクもねむい……今日はボク、奥がいい」
今日は芽生が壁際で寝て、瑞樹が真ん中、そして俺はその横だ。
しばらくすると芽生の寝息が規則正しく聞こえてきた。子供は一度眠ると滅多なことでは起きない。
「瑞樹……瑞樹」
瑞樹の肩を揺らして起こすと、割とすぐに目覚めてくれた。
「あ……芽生くんは?」
「瑞樹の横で寝ているぞ」
「あっ本当ですね、潰さないようにしないと」
「だから、もう少しこっちに来い」
「わっ!」
彼の腰を掴んでグイっと俺の方に引き寄せる。瑞樹も照れくさそうに、でも俺の胸元に顔を埋めてくれた。どうやら瑞樹も今夜は甘えたいようで、嬉しいぞ!
「あの、起こして下さってありがとうございます」
「今日は大変だったろう、あの新人はどうだった?」
「……うーん、結構大変で、まず高所恐怖症でした」
「え? そりゃ大変だ」
「ですよね。それで途中で気持ち悪くなってしまって、僕が脚立にひとりで上る羽目に」
「大丈夫だったのか。支える助手がいなくて」
また瑞樹に怪我でもあったら大変だと、心配になった。
「それが会場のボディガードの男性が手伝ってくれて。僕が少し疲れてしまった時も、さっとペットボトルをくれて……とても気が利く人でした」
「なぬ?」
なんだ、なんだ?
「あぁ誤解しないで下さい。その彼は驚いた事にあの洋くんの幼馴染だったんですよ」
「……へぇ、すごい偶然だな」
そこでようやく安堵した。そういう繋がりなら大丈夫か。
同時に葉山の海で出逢い、あの日……軽井沢までやってきてくれた洋くんの美しい顔を思い出した。
「彼らは元気かな。そろそろ会いたいな」
「そうなんです。宗吾さん……鎌倉の紫陽花は美しいでしょうね」
そうか、瑞樹は職業柄、花を見るのが好きだ。
「六月になったら皆で会いに行くか」
「ぜひ! 僕も2週目の土日なら空いています」
「おお、ちょうど梅雨入りする前後で紫陽花も見頃だろう」
「それから白薔薇の館の当主とも知り合いました。ハプニングがあって薔薇が足りなくなりそうで焦ったのですが、もうドラマか何かのようにさりげなく分けてくださって感激しました」
なんだなんだ? 今日は妙に他の男の話が出るな。
なんだかムラムラと闘争心が湧いて来る!
「くすっ、上品なロマンスグレーの紳士でしたよ。それにとても清楚で美しい白薔薇でした。その薔薇が白金のレストランの中庭に咲いているそうで……」
「分かった!そこにも連れて行ってやろう」
「本当ですか、嬉しいです。あの……」
珍しく積極的に、瑞樹の方から俺にそっと口づけをしてくれた。
嬉しさを伝えたかったのだろう
「ありがとうございます。宗吾さん」
彼のキスと甘い吐息で、一気に浮上する。
「照れますね。実は……宗吾さんと芽生くんと一緒に行ったら楽しいだろうなと、電車の中でずっと想像していましたので」
「あぁ君が行きたい所は、俺も行きたい所だよ」
「よかったです」
さてと、そろそろ俺の時間だろうか。
「瑞樹、次は俺の話を聞いてくれるか」
「あっはい。もちろんです」
「卵ボーロの件だ」
「えぇ。そういえば何でシミレーションしたのですか。僕にも教えてください」
いっ、いきなり核心を!!
さすが俺の瑞樹だ!
「ここだよ、ここをイメージした」
瑞樹をもっと引き寄せ……寝間着の布越しに瑞樹の胸を撫でて、尖りを探した。
「あっ……あ、ダメです、うっ──」
探し出した尖りを、布越しに摘まんだり指の腹で擦ると、あえなく身を折って俺の胸に縋りついてきた。
「静かに出来るか。ここをイメージして作ったんだよ」
「うっ、そんな場所……弄らないでください。た……卵ボーロに例えるなんて、もうっ!」
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