選び選ばれて 10-2

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選び選ばれて 10-2

**** 「じゃあ、行ってきます」 「おお、気をつけてな」 「はい。正午にお店の入り口ですね」 「そう、今日は昼に一度会えるから嬉しいよ」  朝、駅でそんな会話で別れ、もう昼休みだ。  僕は今日は内勤で、来週の結婚式に向けて会場花のデザインを決め発注したりと忙しかった。そして昼は駅前の家電量販店で宗吾さんと待ち合わせをしている。  明日が芽生くんの誕生日なので、プレゼントを一緒に買う約束をしていた。  芽生くんの希望は今はやりの携帯型のゲーム機で、幼稚園でも流行っているらしい。やっぱりイマドキの子供って進んでいるな。 「瑞樹は小さな頃、何をもらった?」 「……僕の家は厳しくてゲーム機を買ってもらえなくて、いつも友達が楽しそうにやるのを隣で眺めていましたよ。それでも広樹兄さんが就職した初任給で僕に買ってくれて……あぁ懐かしいです」 「ムムッやるなぁ……広樹は」 「でももう友達と集まってやるような年齢でもなかったので、兄さんを誘ってよく一緒に遊びました」 「うううう、羨ましいぞ。それ! タイムマシーンがあったら学ランの瑞樹に会いに行く!」 「いよいよ危ない宗吾さん登場ですか」 「おい!」 「くすっ」  改めて思い出せば……お母さんに隠れてこっそり夜中に遊んだり楽しかったな。人並みの事はほとんど経験させてもらっていたと、改めて兄さんに感謝する。  大沼時代はもっと前なので、何をもらったか思い出せない。でもひとつだけ覚えているのは、10歳の誕生日にもらった花の図鑑。大沼にも四季折々の花が咲く。その花の名を知りたくて強請ったのだ。僕の引き取り先が函館の花屋だったのも何かの縁かな。  そうだ! 芽生くんにも本を贈りたい。 「宗吾さん、本屋にも寄ってもいいですか」 「おう、もちろん」  今でもベストセラーの花図鑑は改訂を重ね、販売されていた。  芽生くんにこの本を贈ろう。今はまだ難しいかもしれないが、いつか花について一緒に語れるといい。 「瑞樹、ありがとうな。芽生の心が豊かになる贈り物を選んでくれて嬉しいよ。俺はこんな親馬鹿なものしか選べないのに」 「それはそれでお父さんらしいですよ。僕の図鑑……喜んでもらえるでしょうか」 「もちろんだよ」  家族の誕生日を祝う。  僕たちのだけの記念日が、またやってくる。   あとがき(不要な方はスルーでご対応ください) **** こんにちは。志生帆 海(しいほ うみ)です。 いつも読んでくださり、スターやスタンプペコメで応援ありがとうございます。更新モチベーションに繋がっております。 さて、昨日つぶやきでもお知らせしましたが、 私の『幸せな存在』と、おもちさんの『甘雨のあと』https://estar.jp/novels/25577766で、クロスオーバー企画を始めてみました! 私が小説担当で、おもちさんが漫画とイラスト担当です。 1つの作品で視覚的にも楽しめる楽しい企画ですので、よろしければ♡ ↓ クロスオーバー作品集『甘雨のあとの、幸せな存在』 https://estar.jp/novels/25642826 おもちさんが描いてくださった宗吾さんと瑞樹が漫画で読めます!! おもちさんちのお子さんと出逢って、しあわせです! 今後も……おもちさんと一緒に萌えを注ぎ込んで、楽しく書いていきたいです。季節ごとに更新できたらいいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します♡
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