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選び選ばれて 12-2
「そっ宗く……んっ、僕が欲しいですか」
「焦らすな」
「だって……いつも僕ばかりだからっ」
俺も負けじと彼の蕾に潤滑剤を纏った指を差し込んで、探るように動かしていく。
「やっ……っ」
涙目の瑞樹が、俺の腹の上で揺れている。
もう寝間着は乱れまくり半裸の状態で、ほっそりとした躰を朱に染めあげていく様子が艶めかしい。彼の腰をしっかり掴んで一旦浮かし、その後的確に引き下ろすと、ずぶりと挿入がはじまった。
俺が腰を突き上げると、瑞樹が艶めいた声を漏らす。
酒に酔った瑞樹の感度は良好のようだ。いつもよりずっと過敏に感じているようで、熱い吐息を漏らし余裕がなさそうだ。
「あ……やっ……あっ、あっ」
彼の屹立も扱いてやると「いやっ」と身を捩りながらも細かく震え、あえなく白濁を手中に放った。
あー俺の方もそろそろ限界近いな。
達っしたばかりの彼を追い詰めるように、俺の腰を前後に揺らして出し入れを早め、一気に駆け抜ける。
「あっ……ううっ」
熱いものを瑞樹の躰の最奥に放つと力尽きたように俺の胸にもたれてきたので、深く抱きしめてやった。
「大丈夫か」
「……もっもう……感じすぎて、変になりそうです」
「今日は随分と乱れていたな……」
「……宗吾さんが欲しくて……宗吾さんは……僕のものでいいですよね」
「あぁ、瑞樹だけだ、もう」
「よかった」
彼を胸に抱きしめると、しっとりと汗ばんだ皮膚からやはり花のような香りが漂っていて、また煽られてしまう。
綺麗な花を抱えて帰ってきたからなのか。
俺にとっての花は瑞樹ただ一人なのだが。
止まらない……俺は瑞樹に溺れていくよ。
瑞樹だからだ。瑞樹を心から愛して、彼と幸せになりたいと願う気持ちが、彼を抱くたびに産まれる。瑞樹は俺達は繋がっても営んでも……何も生み出さないと思うかもしれないが、そうじゃないと思うよ。
俺と瑞樹の愛情が深まれば、芽生にとっても幸せな環境が生まれるはずだ。
少し世間と違うスタイルだが、そういう関係は、今後もっともっと自然に受け入れられていくだろう。
だから……
「瑞樹……ひとりで不安になるな。分かったな」
「……はい」
すこし酔いが冷めたのか、瑞樹が面映ゆそうに返事をしてくれた。
お互いの心臓の音が聴こえる。
この音……時を重ねる音と似ているな。
やがて俺の胸の上にしがみつくようにくっついていた瑞樹が……疲れたようで、うつらうつらし出した。今日はこのまま少し眠らせてから、後処理してやろう。
「瑞樹の存在が大事だ。だから……あまり気を遣いすぎるなよ」
そう囁いて、彼の湿った柔らかい髪を指に巻き付けり、指で梳いたり、手のひらで撫でたりして、幼子のように寝かしつけてやる。
少しあどけない寝顔を、飽きずにずっと見続けた。
気が付くと……芽生の誕生日の五月五日になっていた。
「瑞樹、お休み。いい夢を──」
俺が瑞樹を選び、瑞樹が俺を選ぶ。
選び……選ばれて。
今日の二人は……まさに、そんな関係で深く強く抱き合った。
『選び選ばれて』 了
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