花の行先 11-1

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花の行先 11-1

 鏡に映る自分と、目が合った。  頬を赤く染めあげ瞳を潤ませている様子が無性に恥かしくて、ギュッと目を瞑ってしまった。 「瑞樹……瑞樹、こっちを向け、俺を見ろ」 「んっ、ん……」  そっと目を開くと、宗吾さんがもう一度僕を強く抱きしめ、唇を重ねてきた。  ぴったりと唇を覆われ塞がれて、甘噛みされたり、キュッと吸われたり……強弱をつけ唇から丁寧に愛撫されていく。  何度も何度も、角度を変えては同じことが繰り返された。  途中で息が苦しくて唇を薄く開くと、宗吾さんの舌がすぐにやってきて絡み取られた。 「宗吾さん、あっ──」  舌を吸われ口腔内をじっくりと弄られると、頭がぼーっとして、一気に酔いが回ってしまった。  僕の股間も宗吾さんの股間のモノも深い口づけだけで、十分に興奮し始めていた。  僕は欲情している。  もっともっと宗吾さんに触れたい、宗吾さんが欲しい。  日中久しぶり抱いてしまった不安と我慢を、綺麗に拭い去って欲しい。  僕の宗吾さんだと、言葉だけでなく躰でも確かめたかった。  その一方で恥かしさが波のようにやってくるので、その度に目をキツく閉じてしまう。  春に宗吾さんに抱かれるようになってから、気持ち良すぎて涙が零れ落ちる事を知った。寂しさでも、哀しみでもなく……ただただ体が愛撫に過敏に感じ生まれる新鮮な涙が、頬を伝い落ちていく。  濡れた頬を宗吾さんが舌で舐めてくれる。  くすぐったい── 「瑞樹……なぜ? 目を開けてくれ」  宗吾さんに心配をかけたくないので目を開けて、微笑んで見せた。 「なぁ……この涙の理由を教えてくれないか。やっぱり俺のせいか、君を悲しませたよな。ごめん」  今日の宗吾さんはとても素敵だ。精悍な男らしい顔で心配そうにじっと覗き込まれると、本当の理由を言うのが躊躇われた。 「……」 「さぁ言ってくれ。俺には何でも話して欲しいよ、瑞樹……」  唇を指の腹で優しく撫でられ、言葉を促される。 「あの……違うんです。その、宗吾さんとのキスが気持ち良すぎて」 「うっ……また可愛いことを……なら、もっとしてやる!」 「あっ!あ、あ、あっ……」 『キスの雨』という言葉を聞いたことがある。  今僕に絶え間なく降って来るものは、まさにそれだ──  暖かく優しい雨が軽いキスとして、頬……鼻の頭……顎、瞼と次々に降り注ぐ。耳朶も甘噛みされて、腰も震える。  宗吾さんに沢山触れてもらえるのが嬉しい。 「もっと……もっと……僕に触れて……」
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