花の行先 12-2

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花の行先 12-2

「おっ重いですよ」 「軽いよ。それにすごい色気だ」  必死でタオルで前を隠すが、宗吾さんが歩き出した拍子にはらりと床に落ちてしまった。  真っ裸で横抱きにされリビングに出る。  芽生くんがいたら絶対に出来ないことを、さっきから沢山されている自覚はある。 「特別な夜だな」 「……ですね」 「次はどこに行きたい」 「もうベッドに」 「うーん、それもいいが少し寄り道を」 「えっ?」  宗吾さんに降ろされた場所は、キッチンだった。  ま、まさかっ! 嫌な予感がする。  キッチンに裸のまま立たされて、僕がされることと言えば……  キッチンカウンターに押し倒されてのオリーブオイル?   それとも、まさかのエプロンとか?  ぐるぐると、いろんな姿に乱れる自分を想像して真っ赤になってしまう。  目が回り宗吾さんを見ていられなくなり、僕はまた目をギュッと瞑ってしまった。 「おいおい、瑞樹、大丈夫か」 「宗吾さん、一体何を?」 「気持ちいい事をしてやる」 「えっ」  ここで何をされるのか。  覚悟しながら、ごっくんと唾を呑み込み、恐る恐る目を開けると…… 「うわっ!」  いきなり火照った頬に、冷たいペットボトを押しつけられた。 「続きは、ちゃんと水分補給してからな」 「なっ……なんだ」 「おいおい何を想像していた? 君はそんな清楚な顔をしてエロいことばかり考えて、悪い子だな」 「ちっ違います。宗吾さんじゃあるまいし!」 「ははは、俺達ますます似て来たな。似た者夫婦みたいでいいな」 「もうっ……知りません!」  恥ずかしがっていると、また抱きかかえられ、今度はちゃんとベッドに降ろされた。 「ここで君を抱くよ。今宵は芽生がいない。確かにいろんな場所にも興味はあるが、瑞樹の躰にこれ以上の負担をかけたくないし……瑞樹が一番落ち着いていられるのは、やっぱりここだろう?」    その通りだ……  僕は宗吾さんのベッドが好きだ。  シーツや枕に移った宗吾さんの匂い。  僕に覆い被さってくる宗吾さんの生身の匂い。  上からも下からも彼に包まれ、抱かれるのが好きだから。 「はい、ここが好きです。でもいろんな場所も、たまにはいいですよ」 「協力的で嬉しいよ。まぁおいおいな。俺たち、まだ始まったばかりだ。今日は初めて玄関で深いキスを……俺も興奮したよ。この先は次の楽しみに取っておくよ」 「あっ、はい」 「何度でも君を抱くからな」 「……何度でもあなたに抱かれたいです」 「もう君しかいない」  今日一番欲しかった言葉を、ちゃんともらえた。 「僕も宗吾さんだけ……」  先のことなんて、何の保証もないし分からない。  でも信じる事は出来る。  この気持ちがずっと変わらないと、僕も宗吾さんも信じていく。 「信じています」 「俺も同じだ。瑞樹……何度でも言うよ……君に信じてもらえる人になりたいし、君を信じていくよ」 「僕も同じ気持ちです」        
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