紫陽花の咲く道 14-2

1/1
前へ
/1917ページ
次へ

紫陽花の咲く道 14-2

……  宗吾さんとのこれからの人生に希望を抱ける力を、展示されている絵からもらいました。北海道の『みずき』というタイトルの絵に、生きる力をもらいました。ありがとうございます。                                  瑞樹 ……  宗吾さんは僕が書いたメッセージを見ると、髪をクシャッと撫でてくれた。 「よしっ! その調子だぞ。瑞樹」 「はい!」  ちょうど芽生くんの絵も完成したようだ。嬉しそうに僕の前にノートを広げてくれた。 「ふぅーやっとかけたよ!みて~」 「わぁ!」  それは大きな大きな透明の傘だった。  紫陽花が咲く道を歩く僕たち。  傘の下では、宗吾さんと僕と芽生くんが仲良く手をつないで笑っている。  右上には雨上がりの虹が架かり、そのもっと上には白い雲が浮かんで……天使がいた。 「あ……これって?」 「この子はね、おにいちゃんとボクのおとうとのナツキくんだよ」 「……ありがとう。夏樹を描いてくれたの?」 「うん。さっきの絵をみてすぐわかったよ。あのテンシはナツキくんだって」  芽生くんこそ天使だ……キラキラ光る僕の天使。  本当に愛おしい存在だ。  思わず抱きしめてしまった。  すると芽生くんも僕に抱きついてくれる。  満面の笑みを浮かべて── 「お兄ちゃんによろこんでもらえて、うれしいよ」  砂糖菓子みたいに、甘く笑ってくれる。 「芽生くんにもお土産を買ってあげるよ。宗吾さん、いいですか」 「もちろんだ。なんかいつも悪いな」 「芽生くん、この美術館で何か買おうか。それとも違う所がいい?」 「あっそれならボク、さっきすごく気に入ったえほんをみつけたの」 「そうなんだ。見せてくれる?」 「うん! 持ってくるね」  さぁ、ここでも思い出を作ろう。  芽生くんの10年後に……  僕と宗吾さんの10年後に夢を膨らませよう──
/1917ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8000人が本棚に入れています
本棚に追加