紫陽花の咲く道 23-2

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紫陽花の咲く道 23-2

**** 「1、2、3……」  寝起きでぼんやりしていると、バスルームから不穏な声がした。  男の声……何かを確認しあうような声だ。  ハッと飛び起き慌ててリビングのソファを覗くと、丈さんも宗吾さんもいなかった。ってことは、この声って…… 「た、大変だよ。洋くん! 僕たち寝坊した」 「ん……まだ……眠いんだけど……ごめん、寝かして」 「そんなこと言っている場合じゃない! これは……嫌な予感しかしない」 「どうして、そんなに焦ってるの?」 「今、ふたりでキスマークを数えているんだ!」 「えっどうして? てっきり恥ずかしがって隠すと思ったのに」 「いや、どうも違う……あれは……」  どどどど、どうしよう。  僕としたことが、宗吾さんを甘くみていた! 「洋くん、キスマーク何個つけた? 僕と数合わせてくれたっけ?」 「ん……」  洋くんは低血圧らしく、寝起きはかなり怠そうだ。  だが、そんなこと言っていられない。  ゆさゆさと彼の肩を揺らして、訴える。 「思い出して、頼む!」 「ん、たしか10個……あぁ最後に首筋にしたから11個かなぁ」 「えっ、11個!!」  まずい、まずいよ。  僕、10個しかしてない。  この後の展開が読め過ぎて洋くんの手を取って震えていると、案の定、宗吾さんが浴室から血相を変えて飛び出してきた。 「来た!」  宗吾さんは腰にタオルしか巻いていなかった!  「そっ宗吾さん……その姿は!」  彼が僕たちの前に立って何かを告げようと口を開いた途端……お決まりのように、腰のタオルがはらりと下に落ちた。  なななな、何故!!朝からそんなに元気なんですかー!  見ちゃいけないものを見たような気がして(いや、バッチリ見た)、洋くんと慌てて布団の中に潜った。 「悪い悪い、瑞樹。なぁ……頼む。ここに、ひとつ忘れてないか。してくれたら、すぐに帰るぞ」 「うううう……もう宗吾さんって人は……羽目を外しすぎです」 「おいおい、人の躰にこんなにキスマークでマーキングした人間が言う台詞かな」 「ううう……分かりました」  これ以上布団に中に潜っていたら、洋くんが辛いだろうと覚悟を決めた。  僕だけがモゾモゾと布団から出て、彼の首筋に花びらをチュッと散らした。 「もうっ──これで引き分けですからね」 「あぁ、ありがとう」  満足したかなっと身を引こうとしたら、腰をぐっと持ち上げられ「お・は・よ・う」のキスをされた。  リップ音が4回、響いたよなぁ……  はぁ……もう、ハチャメチャな朝だ。 「満足した。この先は羽目は外さないから安心しろ」  急に低い声でカッコいい宗吾さんモードになるなんて、ずるいです!   あとがき(不要な方はスルーしてくださいね) **** 今日はコメディのみで終わってしまいました。 正直、読者さまの反応が怖いです(笑)(〃艸〃) 明日から、いよいよ指輪の交換……通常運転で、しっとりいきますね。  
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