紫陽花の咲く道 24-1

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紫陽花の咲く道 24-1

「流、おはよう。それいいね」 「兄さん、おはよう。だろ? 早起きして作ってみた」 「あの二人にお似合いだね」  朝から工房に籠って作業していた流が嬉しそうに見せてくれたのは、紫陽花のガクを集めて作ったコサージュ(ブローチ)だった。 「こっちが宗吾さんの?」  それは四つ葉のクローバーのような色合いのコサージュだった。まるで野の花を摘んだような瑞々しさだ。瑞樹くんの方は白い紫陽花をベースに、1枚だけ宗吾さんと同じグリーンの紫陽花が支えるように入っていた。  二つを並べると調和が取れていて、素晴らしい出来映えだ。 f07f3ce7-1afd-4419-b58f-f01b569b9584    改めて流のセンスと腕前に関心した。 「そうだよ。こっちが瑞樹くんのだ。彼らしい透明感を出してみたつもりだ」 「うん、楚々とした雰囲気の瑞樹くんらしいね」 「そうだろ。この先、あまり宗吾の色に染まり過ぎないといいが」 「ん……それ、どういう意味?」 「今頃、きっと離れで楽しく大騒ぎしているだろうな」  流がまるで見て来たかのように言うので、気になってしまった。 「流、お前、また覗き見したのか」 「まさか、そんな野暮じゃないぜ。だがきっと今頃、笑いの渦に包まれているんじゃないか。宗吾のヘンタイ魂が威力を発揮されてさ」 「え? まぁ……でもそれはそれでいいのかもね。丈と洋くんは老成しちゃって少し落ち着き過ぎているから一緒に笑っているといい」 「兄さんも口が悪いな」 「あっ」  想像したら可笑しくなってしまった。  いつも澄ました冷静な丈も、宗吾さんのペースに、たじろいでいるかもしれない。 「兄さんもそう思うか。洋くんも……もっともっと自分を取り戻して欲しいよな。あいつらもまだまだこれからだ」 「そうだね。そういう意味でも……瑞樹くんと洋くんは、ちょうどいいね。洋くんに、良い友人が出来て良かったよ。あの葉山の海での出会いに感謝しないと」 「そうそう、俺たちも刺激をもらっているしな」 「ちょっと、流っ、近いよっ」
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