紫陽花の咲く道 25-2

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紫陽花の咲く道 25-2

 明るくポジティブな宗吾さん。  遊び心やユーモアのバランス感覚に優れていて、本当に男気がある人だ。  仕事や真面目な話をしている時は見惚れてしまう程、真剣そのものでカッコいい。  でも冗談が上手くて楽しくて、キュンとしてしまう。  宗吾さんという人間が、僕は好きなのだ。  もっともっと知りたくなる。  本当に逞しい人だ。  愛している……  そんな照れ臭い言葉を、素直に喜んでくれる……僕の恋人。 「宗吾さんを愛しています」 「瑞樹を愛し続ける」  僕たちは皆の前で、指輪を交換し、愛を誓った。  永遠の愛を── 「パパ、お兄ちゃん、おめでとう! これね……ボクからのプレゼントだよ」 「ん? 何かな」 「えへへ、はい、どうぞ!」  芽生くんから受け取ったのは、白い紫陽花を寄せ集めたシンプルなブーケだった。 「これさ、うちの庭の紫陽花だが、芽生くんが全部ひとりで作ったんだぜ」  流さんがそっと教えてくれる。  芽生くんは誇らしげに笑っていた。  白い紫陽花は色が変化しないので、結婚式にもふさわしく……おおらかで優しい心で包み込むという意味を持っている。 「宗吾さん……白い紫陽花は『寛容』を意味しています」 「そうか」  僕は男だから……芽生くんのママの代わりにはなれないけれども、ずっとすぐ傍で君の成長を見守ってもいいと言われている気がして、胸の奥がじんとした。 「芽生くんの大事なパパの傍にいても……いいんだね」 「うん、ボク……お兄ちゃんのことダイスキだから、ボクのそばにもいてね!」  僕は芽生くんの目線まで降り、芽生くんをギュッと抱きしめた。 「ありがとう! 約束するよ」 「芽生、今日の日を忘れんなよ」 「うん!パパ! パパもダイスキだよ」 「おめでとう!」 「素晴らしい式だな」 「幸せになって」  柔らかな拍手が、月影寺の庭先に鳴り響いた。  僕たちだけで指輪の交換を簡単にするはずだったのに……こんなにも素晴らしい時間となるなんて。 「今、とてもしあわせです。僕は今が……好きです」  
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