家族の七夕 1-2

1/1
前へ
/1917ページ
次へ

家族の七夕 1-2

 帰りの電車の中で、宗吾さんにやっと連絡を入れることが出来た。  芽生くんのお迎え、今日は宗吾さんでよかった。  すっかり遅くなってしまったので、一緒に夕食を取れなかったな。  それがとても残念で、シュンとしてしまった。 『もしもし宗吾さん。今日は急な出向で今、池袋のお店を出て、電車に乗った所です。すみません連絡出来なくて──』 『瑞樹、そうだったのか。お疲れさん。それは大変だったな。今すごく疲れているだろう。駅まで車で迎えにいくよ』 『え、そんな、申し訳ないです』 『俺がしたいんだ! 気にするな。君は慣れない場所で働いたから、気疲れしているだろう。いつもの所で待ってる』 『……ありがとうございます!』  数回のメッセージのやりとりで、やっと自分を取り戻せた。  やっぱり宗吾さんって、すごい。  僕の心の救世主だ。  僕が七夕に寄せて……愛を伝え、感謝を伝えたくなる、花を贈りたい人は、あなただ!  今日の僕は、花束を作る暇も買う時間もなく……手ぶらなのが少しだけ残念だ。  でも……僕の疲れた気持ちを、すっぽりと受けとめてくれる人がいる。  それが嬉しい!  宗吾さんに会ったら……少しだけ……甘えたい。  甘えても、いいですか。  今日は七夕だから……は、理由になるかな。    そして、早く会いたくなってしまった。  電車の揺れは銀河鉄道のよう。  僕を宗吾さんの元に連れて帰ってくれる。  ミルキーウェイを飛び越えて。    
/1917ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7998人が本棚に入れています
本棚に追加