家族の七夕 3-2

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家族の七夕 3-2

「ふふふ、でーきた!」  芽生くんが嬉しそうに、カラフルな短冊を見せてくれた。 「おにいちゃんもパパもお願いごとして。ボクはもう書けたよ」 「何を書いたの?」 「んーナイショ。あとでつるしたらバレちゃうけどね。えへへ」  芽生くんに短冊と鉛筆を渡されたので、僕も宗吾さんも願い事を書いた。  その後ベランダに笹の葉を飾って、皆で短冊をつけた。  青や赤、黄色、銀色とカラフルな折り紙で作った短冊が、風にそよいでいた。  ちらっと見えた芽生くんの願い事が、心に響いた。  芽生くんは3枚作っていた。  1つ目は…… 『ボクとパパとおにいちゃんが、ずっとしあわせにくらせますように』  嬉しい……僕も同じ事を願ったよ。  ありきたりかもしれないが、それが一番大切な願いだから。  2つ目は…… 『ママにげんきなあかちゃんがうまれますように』  あぁ芽生くんなりに頑張っている……  必死に現実を受けとめているのだ。  幼い彼なりの精一杯の願い事。  本当に僕は芽生くんのことが大好きだ。そう思う瞬間だった。  そして3つ目には、とうとう堪えていた涙腺が崩壊してしまった。 『おにいちゃんが……おそらのほしになったおとうさんとおかあさんとナツキくんに、きょうだけはあえますように』  宗吾さんも、その短冊を一緒に見てくれた。 「よかったな、瑞樹……」 「はい、嬉しいです」  その晩は僕たちは芽生くんを挟んで手を繋いで眠りに落ちた。 「3人でならんでねると、ほんとうに川のじみたいだね。ボク、漢字もすこしならったんだよ」  芽生くんはそんなことを言いながら……すぐに眠りに落ちてしまった。 「さぁ瑞樹も、早く寝ろ。そして夢の中で会って来い。早くしないと七夕が終わってしまうぞ」 「あっ……はい」  さっきの短冊のことを言っているのだ。  宗吾さんの優しさが身に沁みる。 『瑞樹、瑞樹、元気だった?』 『お兄ちゃん、会いたかったよ』 「パパ……ママ、ナツキ!」  ほら、夢の中でちゃんと会えた。  お空の星になってしまった家族と。  夢の中の僕は、まだとても小さかった。  だから3人に、思いっきり抱っこされた。 「ふふっ、くすぐったい」 「あなた、幸せで満ちているわ」 「そうかな」 「よかったな。瑞樹」 「うん、パパ、ママ、ナツキ……僕は今、とても幸せだよ」  夜中にパッと目が覚めると、いつの間にか僕が真ん中で、芽生くんと宗吾さんが僕の躰を抱き枕のように、抱きしめていた。    夢にしてはリアルに抱っこされていると思ったら、なるほど。  くすっ。 「宗吾さん……会ってきましたよ。僕……ちゃんとみんなに会えました!」  そっと彼に報告した。
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