家族の七夕 4-1

1/1
前へ
/1917ページ
次へ

家族の七夕 4-1

「そうか、よかったな」 「あ、宗吾さん、起きていたんですか」 「少し前にな」 「あの……今、何時ですか」 「まだ夜中の1時過ぎだよ。どうだった? みんな元気だったか」 「はい……家族から、今、幸せそうだって言われました」 「そうか、よかったな!それは嬉しいな」 「はい!嬉しくて夢の中で思わず笑ってしまいました」  瑞樹の口から自然に『家族』という言葉が聞けて、嬉しくなった。    本当は君の事が心配で、ずっと見守っていたんだよ。  というのは内緒さ。    いい夢を見ているか。   今、幸せな夢を―― 『瑞樹がいい夢を見られますように』というのが、俺の七夕の願いだった。  現実の世界で、今、瑞樹を幸せにするのは俺だが、今日だけは夢の中で幸せになって欲しいと思ったから。 「あぁ瑞樹は夢を見ながら、笑っていたよ」 「え? 本当ですか」 「あぁニコニコ笑って、凄く可愛かった」 「うわっ、それ恥ずかしいです。それで、ずっと僕を抱いて?」 「あぁ悪い。重たかったか」  そう……瑞樹は俺の腕の中で、可憐に微笑んでいた。  幼子の健やかな眠りのように。  君は男なのに『可憐』と言う言葉が本当に似合うと、しみじみと思ったよ。    今日は彼をこんな風に優しく抱きしめていたい気分だった。  いつもの癖で瑞樹の柔らかい髪を指先に絡めて、遊んでしまう。 「宗吾さんそれ好きですね。あの……重いというか、夢にしてはリアルに抱っこされている感じで、不思議でした。でも僕……いつの間に真ん中に?」 「あぁ芽生さ、最近寝相が悪いみたいで、冷房のタイマーが切れた途端に暑かったみたいで、瑞樹の上を跨いで転がっていったぞ、くくくっ」 「くすっ、そうだったのですね。それにしても……芽生くんは最近どんどん大きくなって。いつまで一緒に寝てくれるかな」 「どうだろ? 男の子だしな~でも男の子の方が甘えん坊なのかもな」  俺が幼稚園の頃はやんちゃ坊主で、母親になんて近づかなかった。    だが子供は一人ひとり個性が違うものだと、芽生を見ているとつくづく思うよ。俺にはなかっ部分を沢山持っている癖に顔が俺に似て来るのが興味深い。  どんな少年になって青年になって……いくのだろう。 「芽生くんは、本当に優しい子です。僕は芽生くんと暮せて、毎日楽しいです。七夕の願い事にもびっくりしましたよ」 「あぁ俺よりロマンチストだな。芽生は元々優しい子だったが、瑞樹と暮すようになってパワーアップした」 「ふふ、将来無敵ですね。心地いいです。無邪気な芽生くんが大好きです」 「ありがとうな。にしても、何だか目が覚めちゃったな」 「あっ、確かに」  という訳で、俺たちはリビングのソファに移動した。
/1917ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8000人が本棚に入れています
本棚に追加