【成就編】 箱庭の外 1-1

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【成就編】 箱庭の外 1-1

こんにちは、志生帆海です。 本日は、先にご挨拶をさせて下さい♡ 紫陽花のお話から七夕の話とロマンチックな流れで来ましたが、そろそろ物語を動かしていこうと思います。 『幸せな存在』は、一馬の元に、瑞樹が家族で『幸せな復讐』(短編のあらすじ通りの展開です。タイトル『復讐』とありますが、怖い話ではありませんのでご安心ください)をしに行くという、ハートフルなハッピーエンドに向かって順調に進んでおります。 いつも沢山のスターやスタンプ・ペコメをありがとうございます。 おひとつおひとつが、私の毎日更新の励みになっています! それからお詫びが、いつも誤字脱字……申し訳ありません。 随時校正と修正かけていますが、読みにくくてお詫びいたします。 それでは、いよいよ【成就編】のスタートです。 【成就編】 箱庭の外 1 ****  紫陽花の咲く北鎌倉で、洋くんの存在に癒され、心を通わせ、僕はフラワーセラピーというものに興味を持った。  何故なら、洋くんから匂い立つように注がれたオーニソガラムという花の効能が忘れられなかったからだ。  去年の11月に軽井沢で起きた悲劇により生じた心のひび割れ……  それを最後にしっかりと二度と剥がれないように、糊のように塞いでくれたのは、花の持つ力だった。それを身をもって確信できた瞬間だった。 「瑞樹、さっきから何を真剣に見ている?」  フラワーセラピースクールのパンフレットを真剣に眺めていると、宗吾さんに不思議な顔をされた。 「あ、ここ、どう思います?」 「へぇフラワーセラピースクールか。興味あるのか」 「はい、通ってみたくて」 「なるほど、こういうのって会社に申告してみたらどうだ?」 「会社? どうしてですか」 「君の専門分野のステップアップのためなら、会社にとっても役立つことだし、経費で行かせてもらえるかもよ」 「そうなんですか。補助金制度のシステムがあるのは知っていましたが、そういう発想はなかったです。流石ですね」 「瑞樹のことなら何なりと!」  一介のサラリーマンの僕には、スクールの高額な受講代金がネックだった。  トータルで25万円……こういう資格って高いな。函館への仕送りと生活費を考えると、今の僕には簡単に出せる額ではない。  かといって宗吾さんには負担をかけたくないし……  そもそもこのマンションの部屋の家賃だって受け取ってくれないので、管理費相当額しか払っていない。 「瑞樹、今、やりたい事があるなら、もっと貪欲になってもいいんだぞ」 「……そうですね、こんな風に積極的に何かを学びたいと思うのは久しぶりなので、思い切って会社に掛け合ってみようかと思います」 「応援しているよ」  花が持つ力を、もっと学びたい。  花が人を癒し、人が花を大切にする。  そんな幸せな構図を、もっともっと知りたくて── 「その調子だ。少しは図々しくなれよ。君が今まで遠慮してきた分もさ」 「まだ慣れなくて。でも週明けにリーダーに話してみます」 「よし、そうしてみろ。それで、あーコホンっ、俺にも遠慮しなくていいぞ」 「はい……?」 「だから……今から何をするかってこと」 「あっ……」  金曜日の夜は、宗吾さんに抱かれる。  芽生くんが宗吾さんの実家に泊まりに行くので、毎週やってくる僕たちだけの時間。 「言ってくれ」 「……うっ……」 「お願いだ」 「もうっ──照れくさいんですよ」 「だからこそ聞きたい」  宗吾さんが真剣な目で訴えて来る。
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