見守って 12

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見守って 12

 青い車がやってきて、僕の毎日はまた一つ充実した。  土曜日の午後は、思い切り芽生くんと公園で遊び、夜は宗吾さんに抱かれる。  そんな約束が、いつの間にか出来ていた。  とても平穏で幸せな日々が続いている。  今宵も芽生くんが深く眠りについてから、宗吾さんのベッドに誘われた。  もう1時間以上だ。長い愛撫を受け、気持ち良すぎて……涙目でグズグズになっていた。 「もう……ダメ……」 「ダメか」  ギュッと宗吾さんに僕のモノを握りしめられ、蕾に指を差し込まれかき混ぜられる。 いつもよりヌルヌル感が強いのは、宗吾さんが新しく買ってきた潤滑オイルのせいなのか。 「あ、あ……うっ、ん……」 「気持ち良さそうだ」 「それ、いや……っ、離して」 「嫌か。俺は気持ちいいが」 「き……もち良すぎて変になりそう、う……」  もう何度目だろう。前を堰き止められたまま達するのは。 もどかしさ、気持ちよさがごちゃ混ぜになって、興奮してしまう。  淫らな姿……こんなに乱れていいのだろうか。 「あぁ――っ」 「おっと、瑞樹、声、もう少し我慢な」 「あ……ごめんなさい」 「君が謝ることじゃないだろ。俺のせいだ。いいよ、声は俺が吸い取ってやる」 「ん……っ」  深いキスをされながら挿入され、ズンズンっと奥を突かれた。 「そ……そうくんっ、いや……もう……一緒にがいいっ!」 「ふっ、やっと呼んでくれたな。みーくん」 「んんっ イキタイ……っ」  パッと性器を握られていた手を離され、腰を掴まれ……ピストンのように激しく奥を突かれた。  僕は自分の口を必死に抑えながら、快楽に耽っていく―― 「ああっ……あ……」   「瑞樹、大丈夫か」  ゆさゆさと肩を揺さぶられ、ハッと目を覚ます。どうやら一瞬寝ていたみたいだ。   「……もうっ、激しすぎ……です」  少しむくれて言うと、宗吾さんが慌てた様子で謝ってくる。 「ごめんな。みーくんが可愛すぎてさ」 「くすぐったいです。その呼び名……僕と宗吾さんだけの秘密ですよ」 「あぁ、瑞樹の両親には挨拶しておいた」 「え?」 「はは、夢を見たのさ、俺も」 「ええ、初耳です」 「さっき、一瞬俺も寝てた」 「そうだったんですね」 「立派なご両親だったよ」  きっと眠る前に、僕の小さい頃のアルバムを見せたからだ。  大沼のセイは、僕に青い車を送ったことで踏ん切りがついたようで、あの部屋を本格的に改装し出したそうだ。そんな中、クローゼットの奥にまとめられていた古い家族アルバムを送ってくれた。 「ありがとうございます」 「夏樹くんはさ、俺を知っていたみたいで笑っていたよ」 「えぇ? やっぱり?」 「俺、変かな?」 「へ……? 変じゃないです!」   僕の夢と同じだ。おかしい……。  天国まで宗吾さんの変態っぷりが筒抜けだなんて可笑しくて、僕は肩を揺らして宗吾さんに抱きついた。  裸の胸同士をくっつけ、じゃれ合うと……僕のモノがまたムクリとしてしまい、笑われた。 「瑞樹も結構、アレだな。あれ……むっつり~」 「も、もう――」  それは宗吾さんに鍛えられたからです! 僕は適応力が早いだけです。  と、大声で言いたくなったが、また唇を塞がれて言えなかった。 「もう一度しようぜ」 「も、もう――」    *****  毎日は平穏無事に巡り、5月の連休明けの土曜日になっていた。   「パパ、お兄ちゃん、あとで来てくれる?」 「あぁ、あとで顔を出すよ」 「やった~! 待っているよ。いってきまーす」    小学校に行く芽生くんを、いつも通り見送った。  今日は授業参観日。  玄関を閉めると、重たい気持ちになってしまった。 「あの……やっぱり、僕はやめておくので、宗吾さんだけ行かれて下さい」 「瑞樹? 遠慮するなよ」 「……ですが」 「芽生も、瑞樹が来るのを待っているよ」 「ですが」    いつまで許されるのだろうか、いつも誘われるがままに行ってもいいのか。    きっといつか違和感を抱くだろう、芽生くんだけでなく周りの子供も……。 「みーずき、先のことばかり考えていて今、動けるのに動かないのは損だぞ。芽生が来て欲しいって言ってるんだ。行こう!」 「そうですね」 「それにプリントをちゃんと読んだか。1年生の授業は、来年度以降入学検討のご家族も参観OKと書いてある。だからクラスの父兄だけじゃなく、その他の人でも賑わっているさ」 「なるほど……そうなんですね」    僕もいつも宗吾さんみたいに考えられたらいいのに。  僕だって芽生くんが小学校に入学して初めての授業参観、見たい。  もう僕がしたいことを、自由にしてもいい。そう思っているのに、長年の癖はなかなか抜けなくて、結局いつも遠慮からスタートしてしまうのだ。うじうじしている自分が嫌になるよ。 「瑞樹、君が尻込みしてしまう気持ちも分かるよ。だが俺さぁ……ひとりじゃ心細いんだ」 「くすっ、じゃあ支度してきます」  誘い上手で、気持ちを上向かせてくれるのが上手な宗吾さん、大好きです!   「せっかくだから一時間目から見ようぜ。へぇ図工だって」 「それは楽しみですね」  ****  やはり来て良かった!  図工の時間は、校庭で写生だった。  先生が外に連れ出してくれ、子供達は青空の下、思い思いの絵を描いている。 「芽生はどこだー?」 「あ、あそこです!」  校庭の横の花壇に向かって、しゃがんで絵を描いている。  宗吾さんの言った通りだ。授業参観といっても、まだお互いに誰の親だか分からない状態だし、来年度入学者のご家族も紛れてごった返していた。だから僕も何の違和感もなく溶け込んでいた。 「何を描いているのでしょう?」 「そーっと、覗いてみようぜ」  芽生くんの絵は、淡く優しい雰囲気で、透明感のある綺麗な色使いだった。  クローバーの野原に咲く、一輪の白い花。  花びらには真っ白な蝶が留まっていた。  確か……前にも似たような絵を描いていたね。  芽生くんの目はいつも優しい。 「芽生の絵の才能は、君に似たんだな」 「え……そんな」 「俺の絵の腕は知っているだろ?」 「くすっ、はい」  授業の最後に発表があった。一人ひとり何を描いたのか自分の口で説明するらしい。  芽生くん、ちゃんと言えるかな。ドキドキするな。 「じゃあ、次……たきざわめいくん」 「はい!」  わ、芽生くん、いいお返事。 「えっと……ボクは、白いお花をかきました。ちょうど白いちょうちょがとまっていて、花びらみたいにきれいでした」 「へぇ……参ったな。君はいい感性の持ち主だ。1年生なのにとても繊細に物事を見ているんだね」  先生の褒め言葉に周りの親御さんたちが手を叩いてくれ、芽生くんは恥ずかしそうに頬を染め、僕たちを見つめてくれた。  芽生くん、先生に褒めてもらえてうれしそう。  こういう経験が一つ一つ自信に繋がっていくんだね、よかった! 「芽生はやっぱり瑞樹からいい影響をもらってるんだな。瑞樹……改めてありがとう。俺一人では、こんな情緒のある子に育てられなかった」   「あぁ、本当にそう思うぞ!」  突然僕の返事より先に、頭上から渋く低い声が降ってきて驚いた。  振り返ると、驚いたことに憲吾さんと美智さんが立っていた。  臨月の美智さんは憲吾さんに腰を支えられて、優しく微笑んでいた。 「ななな、なんで兄さんがいるんだよぉ!」 「私は芽生の伯父だが、何か文句あるか。あとは来年度以降、入学予定者の父兄だ」 「はぁ?」 「ごめんなさいね。この人、伯父馬鹿と親馬鹿モード発動中なのよ」 美智さんは、困ったように笑っていた。      
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