2023年特別番外編 ハッピーハロウィン 潤&いっくん

1/1
前へ
/1908ページ
次へ

2023年特別番外編 ハッピーハロウィン 潤&いっくん

 朝起きると、隣で眠っていたはずのいっくんの姿が消えていた。 「ん? いっくん、どこだ?」  焦って飛び起きて部屋を見渡すと、壁にかけておいたオレの作業服が床に落ち、中が膨れてゆらゆら揺れていた。 「ひぇ! お、おばけー!」    思わず叫ぶと、中からひょっこりと、いっくんが顔を覗かせた。  薔薇色の頬に、愛くるしい顔立ちが見えて、ほっとした。 「パパぁ、いっくんはここでしゅよ」 「いっくん、どうしたんだ? なんでそんなところにいるんだ?」 「……あのね、いっくん、かしょうしてたの」 「かしょう? あぁ仮装か」 「うん、これきたら、パパみたいにかっこよくなれるかなぁ」  180cmあるオレの作業着は、まだ100cmにも満たない小さないっくんにはぶかぶかで、手も足も服の中だ。 「でもね……ぐすん、いっくん、あるけないの……これじゃほいくえんにいけないよぅ」  歩くこともままならず藻掻いているいっくんに駆け寄って、ひょいと抱き上げてやった。 「いっくんの作業服姿もかっこいいぞ。大きくなったら一緒に着るか」 「うん! きる! いっくん、パパみたいになりたい。はっぱのおしごとしたいの」 「そうか、オレみたいにか」 「うん、パパしゅごくかっこいい。いっくんもこのおようふくがにあうようになりたいなぁ」  いい加減に生きて来たオレを目標にしてくれるなんて……  いっくんにとって、いつまでもかっこいいパパでいられるように頑張るよ!  いっくんは本当にオレの天使だ。 「でも……こまったぁ」 「どうした?」 「はろりんのいしょう、どうしよう? パパのおようふくかりたらいいかなっておもったけど、おおきくてあるけなかったよぅ。あ、でも……だいじょうぶ、なくてもだいじょうぶだよ」  きっと今までは、保育園の小さな行事に準備が間に合わないこともあっただろう。  そんな時は、いつもじっと我慢していたに違いない。 「そうだったな。今日はみんなでハロウィンの仮装をするってお便りが来ていたな」 「しょうなの……どうちよ? きょねんのちっちゃくて」 「あぁ、それなら大丈夫だよ、今年の分はママが作ってくれたから」 「え? そうなの? ママぁ……まきくんのおせわで、たいへんなのに?」  そこに、すみれが目を擦りながら起きてきた。 「そうよ。いっくん、ハッピーハロウィン! 当日驚かせようとして心配させちゃったわね。これいっくんにプレゼントよ」 「わぁ、ママがつくってくれたの?」 「うん、そうよ」 「わぁ……あのね、いっくん……ママのつくったの、ほちかったの」  その言葉に胸が熱くなる。  槙はオレの小さい頃そっくりで、人見知りが酷く長く寝ない上に、眠くてぐずるというスペシャル手がかかる赤ん坊で、いっくんがなかなか甘えられる時間がなかった。 「よかったわ。さぁお着替えしようね」  いっくんの上品な顔立ちに、かぼちゃのプリンス風に仕立てたかぼちゃの衣装がよく似合っていた。 「わぁ……この、かぼちゃさん、キラキラしてるね」 「私達にとって、いっくんはかぼちゃの王子様だからね」 「よかったぁ! ママぁ、ママぁ、うれちい。うれちいよ」  9c2ee4f0-6757-4639-b0f4-0cdcbbc153f1 ……  あのね、いっくんね、ほんのしゅこしだけね、みんなとおなじかぼちゃさんになるの、こわかったの。  みんなとおなじになったら、いっくん、みんなより、せがしゅごくちいさいから……パパにみつけてもらえなくなるかもって、しんぱいしちゃった。  でもこのかぼちゃさんはぼうしにキラキラがついているから、くらくなってもみえるよね。  パパにもすぐわかるよね。    あのね、いっくん……もうせのびしなくてもいいの?  パパがみつけてくれるから。 「いっくん、いってらっしゃい」 「いっくん、楽しんでおいで」 「あい! いってきまーしゅ」   いっくんのほいくえん、きょうはかぼちゃほいくえんだよ。  いっぱい、いっぱいたのしんでくるね。  パパ、あとでむかえにきてね!    
/1908ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7956人が本棚に入れています
本棚に追加