2023年特別番外編 ハッピーハロウィン 芽生&いっくん

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2023年特別番外編 ハッピーハロウィン 芽生&いっくん

 今日は10月31日、ハロウィンだよ。  ボク、今日は放課後スクールはお休みして、みんなと一緒に下校できるんだよ。うれしいな。 「芽生、あとでなー」 「うん、着替えたらすぐに行くよ」  お友達と別れると、ちょうどおばあちゃんが来てくれたよ。 「おばあちゃーん」 「芽生、お帰りなさい」 「ただいま! ボクのマントは?」 「ちゃんと出来ているわよ」 「わぁ、うれしいな」  おばあちゃんにおねだりしたのは、ドラキュラのマントだよ。   「ほら、どう?」 「わぁ~ かっこいい!」 「でしょ。本当のマントの生地で作ったのよ」 「すごい、ずしっとしてる」 「重たくない?」 「ぜーんぜん。着てみてもいい?」 「もちろんよ」  ランドセルを置いてすぐにマントを羽織ろうとしたら、おばあちゃんが「マントとお揃いのベストも作ったの」だって。 「わぁ、すごい! すごいよ!」 1904cafb-9d2c-4a2f-9e7b-7d7a31c2599d 「ボク、ドラキュラさんだよ」 「とってもカッコいいわよ。じゃあ行きましょうか」 「うん」  商店街のハロウィンイベントにどうしても行ってみたかった。  でもいつも3時からだから、パパとお兄ちゃんもお仕事でダメなの分かっていたから……あきらめていたよ。そうしたらお兄ちゃんがおばあちゃんに頼んでくれたんだよ。  お兄ちゃんはいつもボクががまんしたことに気付いてくれるんだ。  すごいなぁ。  お兄ちゃんってやっぱり魔法使いなんだね。  大好きだよ。  商店街でお友だちと一緒に大きな声で『トリック・オア・トリート』って言えたよ。お友だちにも「メイのドラキュラカッコいい」ってたくさん言ってもらって、うれしかったよ。  おばあちゃんは、ずっとニコニコして後ろからついてきてくれる。  ボクはみんなとワイワイ仲良く歩いたよ。  商店街のおじさんやおばさんから、チョコレートやクッキー、キャンディにマシュマロ、沢山もらって、かぼちゃの入れ物からあふれそう。  あとでパパとお兄ちゃんにもあげるんだ! 「いつもありがとう」って、言いたいな。   ****  ハロウィンの夜、僕は駅からダッシュで家に向かった。  今日は途中からハロウィンアレジメントの助っ人に入って、休む暇がなく、帰宅も遅くなってしまった。宗吾さんが早く上がれたので、お母さんの家に預けた芽生くんを迎えに行ってもらえて良かった。  これからやっとゆっくり家族でハロウィンを楽しめる。   「ただいま!」 「おー 瑞樹お疲れさん。俺たちも今帰った所だ」 「そうでしたか。今日はすみません」  中から黒いマント姿のメイくんが登場した。 「お兄ちゃん。お帰りなさい。あのね、見て、見て、おばあちゃんがつくってくれたドラキュラの衣装、かっこいいでしょう?」 「わぁ、すごい本格的だね。赤い裏地までついて。あ、ベストも」 「うん、これで商店街を歩いてお菓子をもらったの。お兄ちゃんにもお土産あるよ」 「ありがとう」  優しい言葉、明るい会話に疲れが吹っ飛ぶよ。  芽生くんの充実した表情に元気をチャージしてもらった。  スーツを脱いで部屋着に着替えようとすると、宗吾さんが恭しく何か白いものを持って部屋に入って来た。  白くてモコモコ…… 「瑞樹はこれな」 「はい?」 「だから今日はハロウィンだろ。それに着替えて出掛けるぞ」 「えぇ? どこにですか」 「決まっているだろう。俺たちが寛げる場所さ」  するとメイくんもやってきた。  さっきとは違う格好になっている。 「ええっと、その衣装は子供たちの間で人気のホリーポッター?」 「ピンポーン。すごいでしょう。あのね、これ憲吾おじさんが買って来てくれたの。銀座のおもちゃ屋さんで」 「はは、兄さんは芽生に激甘だよな」 「ですね」 「だからさぁ、せっかくだからこれを着て出掛けてみようかと」 「あ、はい。じゃあ急いで着替えますね。えっと、僕はうさぎの着ぐるみでしょうか」 「そう。今年は……うさぎな」 「え? 今、なんて言いました?」 「こっちの話だ。気にするな」 「?」  何も考えずに袖を通すと……    ん?  えぇっと……  えー! 「宗吾さん、大変です!」 「どうした?」 「これ、丈が短いんです。あの、その……お腹が見えてしまいますよ。サイズを間違えたのでは?」 a988bf4c-8ab6-46f1-9fd9-d1f8532f013e 「いや、これでいいんだ。俺が君のために流にオーダーしたのさ」 「ええ? こんな格好で出掛けるのは恥ずかしいですよ」 「大丈夫だ。マントを羽織れば見えないし、車で移動する」 「お兄ちゃん、早く行こうよー ボク、ナイトパーティー大好き」 **** 「ただいま~」  今日は仕事が早くあがり夕方5時過ぎにかぼちゃプリンス姿のいっくんをつれて家に帰れた。  玄関を開けると、すみれが飛んで来た。  何やら、大きな包みを抱えている。 「大変よ。さっき、これが届いたの!」 「ん? 誰から?」 「大沼のお父さんから」 「おー! なんだこれ? すごいな」 「運動会の帰りに銀座に行くって言ってたでしょ。そこで見つけたみたい。…いっくんに似合いそうだからって」 「こんな高そうな衣装いいのかな?」  これって有名な映画のホリーポッターの衣装だぞ。    お父さん、随分奮発してくれたんだな。  こんなにもオレたち家族のことを気に懸けてくれるなんて、嬉し過ぎるよ。  そこにもっと驚くことがあった。  宗吾さんから芽生坊のハロウィンコスの写真が届いたが、その中にこの衣装を持っている芽生坊がいた。 「すみれ、これ見てくれ」 「え? もしかしてお揃い?」 「二人並んだ所を、見てみたいな」 「見たいわ。そうだ! 今から東京まで行ってきたら? 明日は潤くんはお仕事休みだし、いっくん1日位、保育園をお休みしてもいいわよね」 「え? いいのか」 「もちろんよ。いっくん、この衣装を着てお出かけしてみたいと思ってるわ」 「そ、そうか。じゃあ今から行くか」 「遅くなっちゃうけど、一目だけでも」 「おぅ!」  まさにハロウィンマジックだな。  こんなに急に思い立って東京に向かうなんて。 「新幹線で1時間の距離だ。あっという間に着くぞ」 「パパぁ、いまから、めーくんにあえるの? いっちょにはろりんできるの?」 「あぁ、そうだぞ。よかったな」 「やったぁ、やったぁ、いっくん、いまのうちにねんねする」  オレの膝に座って胸にもたれてコトンと眠るいっくん。  まだかぼちゃプリンスのままだったので、通り過ぎる人が、皆、目を細めてくれる。 「向こうに着いたら着替えような」  いっくんがいると世界が変わる!  こんな風にフットワーク軽く兄さんに会いに行けるなんて夢みたいだ。  そこに兄さんからのメール。行くことはさっき伝えたが何だろう? 「潤、急遽、行き先変更だ。あそこで会おう!」  あそこと言えば、あそこか!    これは楽しいことになった。  再びオレたちは、集う!  子供にとっても大人にとっても最高の場所で。 **** 駆け足になって、すみません。 次は『重なる月』で会いましょう! 続きはこちらに飛んで下さい💕 https://estar.jp/novels/25539945/viewer?page=1558&preview=1 いっくんと芽生のホリーポッターの衣装姿も向こうで掲載しています💕 あちらで、ぬい大集合させます。
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