Prologue

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「あら、七海はバカじゃないわよ?」 「そうだ、七海はバカじゃないぞ!」 ……それが「親バカ」っていうのよ。 「それに、会って話をしてみないことには、合うかどうかなんて、わかんないじゃない」 母は教師らしく「正論」というキレイゴトで返した。 「それに……写真見てごらんなさいよ。 ……ほら、結構イケメンじゃない?」 指で示された先に写っていたのは、職場でBBQに行ったときのものだという。 ちょっと神経質そうではあるが、さすがT大出身だけあって理知的な風貌をしている。 横長スクエアのリムレスの眼鏡がすごく似合っていた。さらに、ギンガムチェックのボタンダウンの半袖シャツにチノパンをオシャレに身にまとった、すらりとした体躯だった。 釣書には「身長一七八センチ」とある。 「いかにも『見合い写真』っていうのより、こういう方が普段の様子がわかるだろ? 七海の写真も、家族旅行で伊豆の温泉へ行ったときにおとうさんが撮ったのを渡しておいたぞ」 父が得意満面で言い放った。 その瞬間、母の顔が歪んだ。
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