13/19
前へ
/505ページ
次へ
あたしたちは、くーっと一息でガラスのお酒を吞み干した。あたしは、普段は得した気分になるはずの大容量のコリンズグラスを恨んだ。 そのあと、赤木さんがバーテンダーに「うるさくして悪かった」と言いながらお会計を済ませ、奥にいるお客さんたちに「お騒わせしてご迷惑をおかけしました」と、二人で頭を下げて謝った。 幸いなことに、四、五十代と思われる「上司世代」の彼らは苦笑しながらも、 「ケンカしても仲直りしなきゃダメだよ」 「イケメンな彼氏だから、いろいろあると思うけどさ」などと、温かく励まして(?)くれた。 ……彼氏ではないんですけれども。 とは思ったが、めんどくさいので訂正はせず、曖昧に微笑んでいたら。 なんだか気をよくした赤木さんが、 「これからこいつに土下座して謝り倒して、なんとか許しを請います」 と、しれっと言うではないか。 とたんに湧き上がる笑い声と拍手の中で、あたし一人が呆れ果てていた。 そうやって場が和んだところで、もう一度頭を下げて、あたしたちは店を出た。
/505ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9373人が本棚に入れています
本棚に追加