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「あの……赤木さん、言ってなかったけど、あたし、この前お見合いしたの」
……だから、もう「あの頃」とは違うんだよ。
「知ってる……月曜日、おまえの同期の青山に、おまえに彼氏ができたかどうかを聞いたら、そう言ってた」
……あぁ、青山には「同期会」のときに話したもんね。
「見合い相手は、おまえの父親の部下だって聞いたぜ」
前を見据えたまま、赤木さんは言った。
「おまえの父親……T大出身の金融庁のエリート官僚だったんだってな?」
……あ、知ってたんだ。
だけど、うちの父が勤務する金融庁の証券取引等監視委員会が役に立つかもしれないなんて、目産のコーン会長みたいに有価証券報告書の虚偽記載の疑いによる金融商品取引法違反で、検察庁に告発されたときくらいだ。
うちの会社で出世していくには、何の影響も及ぼさない。だから、赤木さんには何の利用価値もないはずだ。
「なんで……」
赤木さんの声が、突然、掠れた。
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