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だけど、ホッとするのもつかの間だった。 今度は肩に手をまわされて、ぐっと引き寄せられてしまった。とたんにがっちり固められて、身動きが取れなくなった。しかも「親密」に見える。 通りかかった男女が「なぁんだ」という感じで去って行く。 彼の懐に入ったことで、そのスーツからふわっと香ってきた、石鹸のようなのになぜかスモーキーさも感じられる、不思議なフレグランス。 懐かしいあのブルガリのブループールオムが、こんなに怖く感じる日が来るとは、夢にも思わなかった。 「……心配しなくていい、七海」 赤木さんは低い声でそうつぶやき、 「だれにも邪魔されない静かなところで、おまえと話をしたいだけだから」
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