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「おとうさん、せめて『彼氏はいないのか?』くらい確かめてから話すべきよ?」
母が呆れた口調で窘める。
あたしの母親・祥子は、国立の女子大ではトップのO女子大を卒業後、母校の女子校の教師になった。今では高等部の教頭である。
父とは学生時代に「友達の紹介」で知り合ったと言っているが、なんとなく今で言うところの「合コン」みたいなものだったんじゃないかと思う。
二人に詳しく訊いてもいつもはぐらかされるから、きっとそうだ。
「……ま、ここ三年はそういう人はいないようだけどね」
母はお茶をすすりながら、平然と言った。
……図星である。さすが、教師。
仕事が忙しくて、わが子のことなんて見てないとばかり思っていたが、しっかり見ていた。
確かに、直近の元カレとは三年ほど前、彼の転勤がきっかけで別れた。
「おっ、おまえっ!彼氏がいたことがあるのかっ!?」
父がダイニングテーブルの椅子から、いきなり立ち上がった。
……おとうさん、娘を何歳だと思ってるの?
来年の二月には、もう二十七歳になるんだよ?
ま、こういうことになるだろうから、今まで彼氏になった人をうちに連れてくることはなかったんだけれども。
それに、うちの家族の経歴と職業を聞くと、決まって縮み上がっていたし。
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