Prologue

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それにひきかえ、あたしは「残りカス」のような人間だ。 一応中学入試のときにこの人生で一番勉強はしたのだが、合格した中学は母が勤務する女子校だけだった。母の母校でもあるから「ファミリー推薦」も威力を発揮したのだろう。 そして、大学はT女子大と言えば聞こえはいいが、指定校推薦での入学で、受験科目は小論文と面接のみである。もちろん「進路指導」をしたのは母親だ。 さらに、大学卒業後、TOMITAホールディングスという大企業に入れたのも。 (大きな声ではいえないが)母方の祖父がグループ企業のTOMITA自動車の販売店を経営しているという「縁」が「(ゆえ)」の「入社」である。 それから、見た目は姉とは一八〇度違って、母親似で大きな目にちんまりした鼻のため、かなりの童顔だ。すっぴんでコンビニへ行って缶チューハイでも買おうものなら、身分証明書の提示を求められそうなくらいだ。 また、本当(ほんと)は身長が一六〇センチあるのだが、どういうわけか一五五センチほどしかないイメージなのだ。 だけど、そんなあたしでも、二人目の子がほしくてやっと恵まれた両親にとっては「生きてるだけでいい」らしい。生まれてこのかた、たとえ中入のときですら「勉強しなさい」と言われたことはない。 そしてそれぞれの節目で、 『七海、よくやった!』 『七海、よくがんばったわね!』 と、ものすごーく喜んでくれた。 きっと「バカな子ほどかわいい」っていうのに違いない。
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