Prologue

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この降って湧いたような見合い話だって。 姉ほどの美貌なら、結婚相手なんて自力で見つけられるだろうし、あの優秀さなら別に結婚しなくてもじゅうぶん独身(ひとり)でもやっていけるだろう。 だが、せっかく入れてもらった会社で「秘書課」に配属されたと言っても、あたしは専属秘書たちが面倒でやりたくない仕事を引き受ける「雑用係」である。スキルアップなんて望むべくもない。 父もそれをわかっていて、あたしがあっという間に三十歳になる前に、なんとか「永久就職先」を決めてやろうという「親心」なのだろう。 母の顔立ちによく似たあたしを、父は気になって放っておけないみたいだ。 ……あたしは、ちゃんと父の「話」を聞こうと思った。
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