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21 下から、中に押し入ってくる熱い塊。 腕を回して、わたしはミュルの大きな肩にしがみついた。 熱っぽいごつごつした胸板が、つめたい乳房を温めてくれる。 知っている匂いがする……と。 そう思った。 よく知っている匂い、よく知っているぬくもり。 ゆっくりと、ごくゆっくりと、ミュルは膣内(なか)を進んでいく。 それが自分の最奥に到達するのを、息を詰めるようにして待ちながら、わたしは、ミュルバッハの顎先を舌で舐めた。 伸び始めている髭の先が、チクチクと舌を刺す。 ふと、わたしの中の熱く大きなものの動きが、途中で止まった。 ちいさな指の傷から血がふつふつと湧き出すみたいに、ミュルと触れ合っている内側の部分からは、快感が滲んで溢れてくる。 頭の中が真っ白になり、わたしはミュルの顎に歯を立て、夢中で甘噛みした。 わけわかんないよ……。 ……もう、我慢できない。 「はやく、みゅる……て、き…て、おく、」 動きを止めたままのミュルに、わたしは、とうとうねだり声を上げた。 「…っと、もっと、いっぱい…して」 「だ…から…よぉ、せかすなって、ナナミ」 ミュルの肩が、ぶるりと震える。 「んな、無理い…うな、もっていかれっちまうだろ…が」 「いいの、みゅる……いいから」 両腕をさらに伸ばして、わたしはより深く、ミュルの背中を抱きしめた。 「いって…いいから、きて……はや、く、もっとおく」 こんちくっしょう……と。 なぜだか悪態を洩らして、ミュルが、ズクリと最奥へ打ち当てた。 その甘鈍い打撃に、わたしが悲鳴を上げると同時に、ミュルの身体が激しく痙攣する。 どくどくとしたミュルのペニスの脈動と、じわりと染み出してくる熱のようなものが、わたしの内側を痺れさせた。 ミュルは、奥深くに自分自身を埋め入れたまま、ピクリとも動かない。 わたしの方も、もう今にも達しそうになっていた。 吐精を続けるミュルへと、夢中で身体を擦りつけて腰を揺らす。 そして、ガジガジとミュルの顎を齧りながら、 「……みゅる、すき、すき」と、熱に浮かされた声で洩らした。 とはいえ、もはや何を口走っているのかは、自分自身、多分ほとんど解ってはいなかったと思う。 「え……?」 わたしを押しつぶさないよう、腕立て伏せめいてベッドに両腕をついていたミュルバッハが、ハッと顔を上げた。 「お…い、ナナミ、お前、いま、なんか言ったか? なんて言ったよ」 その瞬間、わたしはオルガスムスに達した。 仔猫めいて細い声を上げて、ミュルの硬い身体にしがみつく。 内襞が痙攣して締めつけるミュルのペニスは、一度射精したくらいでは、どうともならないくらい、まだ熱くて硬くて大きいままで。 わたしはもう、声を抑えようという気もなくなってしまっていて、せつなく嬌声を上げながら、ひたすらに絶頂を貪った。 ものすごくイクって……。 実は、結構、難しいのかも。 エクスタシーの波が、少しずつ遠ざかる中。 ミュルバッハのねこっ毛の髪に額をくすぐられながら、わたしはそんなようなことを、ふと思う。 もしほんのすこしでも、どこかに何か不安があったなら。 きっと夢中になりきれなくて。 一番先まで行き着けなくて……。 どこかで「ストップ」が掛かってしまうのは、たぶん……そのせいで。 思い返してみれば。 最初から、すごく良かった。 はやくきてって、もっと奥まで…って。 そう言わずにはいられないくらいに。 ミュルとは。 ……足りない。 まだ、ぜんぜん足りないよ。 「ミュル……ま…た、イク」 モゾモゾと身をよじり、わたしは勃起しきった乳首をミュルの腹筋に擦りつけた。 「…して、もっと、もっとして」 大きな掌で乳房を掴まれる。 とがりきったわたしの胸の中心を、ミュルが太い親指の先で、くるくると弄んだ。 疼くような甘い刺激に突き動かされ、わたしはまた、ミュルの顎先に牙をむくようにして歯を立てる。 そして、「いい…すごく、ミュル、いい」と わたしが声を震わせると、ミュルバッハが、腰を振り始めた。 手前から、奥へとゆっくりと擦り上げて……。 最後はねじ込むようにして、奥を突き上げられる。 わたしのくちびるから洩れ出す喘ぎ声は、いつになく抑えが利かないものになっていて。 でも、そんなものなど消し去ってしまうかのように、ふたりを載せた小さなベッドは、気の毒なほどに揺れて軋む。 あ、ベッド、こわれたら……どうしよう。 とかって、一抹の不安がよぎるけれど。 でも、そんなものは、すぐにどこかに消し飛んでしまう。 「っとに…おまえ……コレ…好きだな」 わたしを揺さぶりながら、ミュルが喉の奥にこもった声を出す。 「だ…って、きもちい…」 とめどなくこみ上げる溜息と喘ぎの合間をぬって、わたしはミュルに応じた。 「きも…ちいいの、ミュルの、これ」 「ん」と。ごく短く、ミュルは唸り声で返事をする。 いつもみたいに。 「…ゅるは? ミュル、は?」 「あ? なんだって?」 「みゅる…は? きも…きもち、い…い?」 するとミュルバッハが、溜息とも呆れ声ともつかない息をひとつ吐いた。 そして、「アホ」と舌打ちをする。 「んなも…ん、メチャクチャ…いいに決まってんだろうがよ」 というやいなや、熱くて硬いペニスで、ミュルが深々とわたしを穿った。 下腹部に打ち付けられたミュルの腰が、パシンとひどく乾いた音を立てる。 じくじくずくずくと、身体をむしばむような快感に襲われながら、わたしは。 ……ああ、アホのミュルに「アホ」とか言われちゃったなあ。 なんて、そんなことを思うともなく思っていた。
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