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3 一瞬、意識が飛んだ感じがした。 でもすぐに、下腹部の、中の中の方が、ぎゅっと強く痙攣する感覚に引き戻されて。 奥までえぐり入れられたミュルバッハのペニスを、わたしは絞り上げるみたいに締めつけ続けている。 とてつもなく高いところまで放り投げられるような衝撃は、すごくすごく「いい」のに。 でもそれは、もうどうにもならないくらい良すぎるから。 思わず「やだ…やだ…」っていううわ言が口をついて出た。 きつく目を閉じる。 身体中をこわばらせて、つま先がつりそうなほど、足をつっぱらせる。 そして、すこしずつ、エクスタシーの波が遠ざかっていく。 顎先で、ミュルバッハの濃い茶色のくせ毛を撫でて、うっすらと瞼を開いた。 わたしの腰を抱えたまま、ぐっと深くペニスを押し入れた状態で、ミュルバッハは眉間に深い皺を寄せ、血が出そうなほど固くくちびるを噛みしめていた。 まだ、爆ぜてない。 溜息で、わたしはミュルの耳を撫でてやる。 と、ミュルバッハは、わたしに深く入ったまま、ぐるりと背後に回った。 わたしは射撃台の上にうつぶせにされる。 ミュルバッハは、太い腕をわたしの胸もとに回した。 直に身体が、カウンターに触れないようにしてくれてるんだろうけど、でも、ミュルの腕もたいがいに硬くてごつごつで、板に触れてるのと大して変りはしない感じ。 ……ただ、ミュルの腕は、板切れみたいに冷たくはない。 ずる…と、ミュルが腰を引き戻す。 ペニスに吸い付いていた襞ごと、外へと引き出されるような感覚に、背筋に戦慄めいた電流が走った。 雁首ギリギリまで引き出しておいて、ミュルバッハはふたたび、勢いよく、その大きくて長いものをわたしの奥へと押し入れた。 まだエクスタシーの余韻で熱くただれきったままの最奥に、ずしんと鈍い重みが掛かる。 わたしのくちびるから洩れ出したのは、ほとんど悲鳴に近い喘ぎ声。 ミュルは、ずくずくと激しく突き上げてくる。 「や、んっ、や……あっ」 いやじゃないけど……すごく…。 「い、いい、ミ…ュル、い…そ、こ」 とまらない喘ぎ声の合間に、努力して「是」を伝えるも、ミュルは「ん…」と、低く唸るのみ。 多分、ミュルバッハの方も良すぎて、いっぱいいっぱいなんだろう。 さっきから、ものすごく息があがってる。 ……まあ、それだけ腰とか身体使ってれば、そうだろうけど。 ヒップにミュルの腰が当たる音が、パシンパシンと響いてる。 わたしの身体に回されたミュルバッハ腕の、鳶色の体毛が、ちょうど乳首の先端をくすぐる。 下半身に加えられている刺激と比べれば、それってまるでないに等しいほどかすかなものなのに。 わたしは、その感触をひどく敏感に感じとっていた。 そのちいさな部分は、じわじわと渇望感を強めていくから、わたしは肩を揺すって、二つの突起をミュルの腕に擦りつける。 しばらくして、ミュルバッハがそれに気づいた。 太い指先で、胸の尖りの先端に触れてくれる。 じわりと押し寄せる刺激に、わたしの膣内が反射的にきつく締まった。 あっ……と。 わたしがひと声洩らした刹那、ミュルバッハが、突然爆ぜた。 深く楔を打ち込んだまま、わたしの背中に身体を密着させて、ミュルが身体をひくつかせる。 わたしの中の大きくて熱くて硬いものも、ビクリビクリと痙攣していた。 ……ミュルバッハが色目使ってくるのには、いつ頃から気づいてたっけ? ああ、「色目」とか、そんな生ぬるいもんじゃなかったか……。 もう、「やりたくてやりたくて仕方がない」みたいな? うん、そんな感じだった。 実はそういうのには、意外に疎いわたしですら、ハッキリと気づくほどに。 別に男漁りが目的で、わざわざ警官(オフィサー)になったわけじゃない。 まあ、こんなところに「女だてら」に就職すれば、それこそ「より取りみ取り」だろうとか、思われるかもしれないけど。 でもね、残念ながら物事は、そう単純じゃなくってさ。 一度。 まだ、制服警官(ユニフォーム)の頃だけど、同僚と寝たことがあった。 わたしの「趣味」よりは、ちょっと線が細かったけど感じがいいヤツで。 すぐ「がっついた」わけじゃない。手順を踏んで、最初はコーヒーなんか飲んで、次は食事行って、バー行って。 で、三回目くらいのデートでセックスした。 ベッドは別に悪くなかった。悪くはなかったけど、最低なのは。 ……男どもの口の軽さ。 自慢か? あれって。 俺はあいつと「ヤったぜ」みたいな。 なんでそういうのを、同僚中に言いふらしたがるのかね、馬鹿男どもは。 わたしも見る目がなかった、というか、若気の至り。 男のカルさを知らなかった。 それ以後、職場の男には「手を出さないにこしたことはない」って主義だったわけ。 だからミュルバッハが露骨に、もうホント、欲望丸出しの顔でこっちを見てても、わたしは完全無視って感じだった。 正直、ミュルは、すごい好みではあったんだ。 ……身体がね。 「一発くらいはいいかな」とか、思ったりはしたんだけど。 同僚でさえなけりゃ。 だってさ、こう、見るからに頭カラッポだったし。 情事を、酒の肴に周囲に自慢して回りそうなタイプに見えたから。 で、そのミュルと「こういう関係」になったのには、一応きっかけがあった。 ちょうどその頃、わたしと相棒(バディ)は、ちょっとした書類申請のミスを弁護側に突かれ、せっかくの証拠をおじゃんにされてしまって。 めちゃめちゃ捜査して追い詰めた被疑者の公訴が棄却されてしまったところだった。 普段なら、気持ち切り替えて次に進むけど。 その件に関しては、わたしは、ものすごくガッカリしたし、苛立ってもいた。 だってそのミスって、わたし達の努力でどうにかなったはずのものじゃなくって、そもそも警察の手続き自体の盲点で、そこを、やり手弁護士に突っつかれてしまったせいだったのだ。 そんなわたしとバディに対して。 同僚のオフィサーたちは、同情派と冷笑派、半々ってとこだった。 女がたった一人紛れ込んで、私服警官やってるってだけで気に入らない男ってのは、いつだっている。 でもそれでも、同情派の連中だって噂話は大好きで。 そもそも今回の失敗は、問題の手続きに関わった制服警官(ユニフォーム)とわたしが、肉体関係にあったことがきっかけだったとかなんとか。 そんな感じの根も葉もない話が、あたりに広まりかけてた。 気分は最低だった。 裁判を逃れた被疑者は、ホントに胸糞悪いほどの「くそったれ」だったし、それだけでもヒドイ気持ちになってしょうがないってのに、そのミスが「わたしの下半身問題のせい」とかって、何それ?! っていうか。 その制服警官ってのが、色白の優男系でさ。 「それにしても、あのユニフォームだけはね……だってぜんぜん、ナナミの好みじゃないよなあ」 って、相棒(バディ)は、呆れながら一笑に付そうとしたけど。 ホンっとその通り。 わたし、「あれ」とは絶対、寝ないってばよ、もう! まあとにかく、公訴棄却になった問題の原因については「内調」や「上」の方も、ちゃんと把握してたみたいだから。 わたしやバディや、くだんの優男制服警官も。 審査沙汰とかの「おおごと」にはされないはずで、こっちの身に実害が及ばないことは解ってた。 だから。 不愉快な噂ではあるけど、広まるだけ広まってしまえば、そのうち飽きられて鎮火するだろうって、わたしは自分を納得させようとしてた。 でも、その噂。 意外に、広まらないうちに消えて行ったんだ……。 まさに「抜かずのなんとやら」で。 吐精の後、ミュルバッハは、わたしに挿入したまま、また体位を変えた。 射撃台の上にわたしを仰向けにして、両足首を掴んで脚を広げさせる。 ゆっくりと大きく腰を使って、ミュルはわたしの膣内(なか)全体を擦り上げた。 奥以外の、あちこちの感じる場所がミュルバッハの亀頭で圧迫されて、それまでとは違った快楽が、わたしの腰を突き上げる。 「ん、ミュ、ル、い…く」 身体をのけぞらせて、わたしはまた達する。 その動きで、中に入ってるミュルバッハのペニスが、絞るようにねじ上げられたから、ミュルは獣めいて低い唸り声を上げた。 耳たぶが、火のように熱を帯びている。 最初は、背中にひんやりと冷たく感じたカウンターの表面も、すぐにわたしの体温で暖まった。 ひくついて締め付けるわたしの中で、ミュルバッハは動き続ける。 時折、ずくんと奥に押し当てられて、そのたびに、わたしは泣きそうな悲鳴を上げた。 もうイキすぎて、腰を揺らす力もなくなって。 わたしは、ただ横たわってミュルを受け止めるしかできなくなった。 それでも、雁高の硬くて大きなミュルのペニスが、わたしの中のいろんな場所を刺激してくるから。 快感は、止めどもなくじわじわと湧き上がって溢れ出し。 その後も、何回もわたしは達した。 そのどれもが、とんでもなく深いオルガスムスだったから、もう腹筋とか使いまくりで。 さっきから、腿の裏とかお臍の周りとかの筋肉が、痺れて震えている。 ……ああ、もう。 これ、明日絶対、筋肉痛だな。 ミュルバッハに揺すぶられながら、わたしはこんなことを頭の隅で思う。 ミュルも、もう何回も、わたしの中に出してた。 入口から溢れてくる感じで解る。 わたしのだけじゃない「なにか」で、もう、内腿が膝近くまで、ぬるぬるになってるから。 でもそれでも、この岩男。 まだ腰を止めずに、わたしを擦り上げ続けてるってさ……。 うん、アリガトー、すごい良かったよ、ミュル。 いっぱいイったし。 でもちょっとさ、さすがにわたしも、もうお腹いっぱいなんですけど……。 って、そう言おうと思った瞬間、ミュルバッハが射精した。 すこし上ずった声で短く悲鳴を上げて、ミュルバッハは、わたしを抱きしめながら痙攣する。 ちょっとあんた、腕、力入れすぎ…痛いよ。 って思ったけど、まあ我慢できなくもないから我慢してやるか。 身体「だけ」が取り柄の馬鹿な男だけど。 ホント……身体は「良い」から。 だからついつい、こんな「付き合い」が切れない。 たぶんまた、すぐに、したくなる。
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