赤い猫

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赤い猫

 商店街の店は、シャッターを開けて電気を煌々と付け、ショーウィンドウに溢れんばかりの商品を並べている。しかし、客はおろか店員の姿はない。  ミユは一軒一軒店を回って人を探すついでに、店の様子を窺っていたのだが、不思議なことに気づいた。  まず、店が様変わりしている。記憶に残っている店とはずいぶん違うのだ。一番驚いたのは、生鮮食料品を売っている店が全くない。  確か、あそこに八百屋が、肉屋が、お惣菜屋があったはず。それらが全て、雑貨店やらコンビニ店やらコインランドリーになっている。  建物もいくつか建て替えられている。 「この町の未来の光景なのかしら?」  辺りを窺いながら歩くミユの耳に、ガタンゴトンと電車が走る音が聞こえてきた。
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